第13話 再びホームセンターへ


 ううん、つまらん。


 昼までずっと、山田村の様子を見ていた。

 特別な変化はなく、そろそろ飽きてきた。


 柵をつくるのに難儀しているらしい。

 確かにモンスターが出る以上、大事なことなのはわかる。

 だが視聴者のことも考えてほしい。

 さすがにずっと同じ作業を見ているのは辛いのだ。


 それなら、作業を早めるように手伝ってやればいいのか。

 しかし、柵づくりに必要なものとは?


 ネットで調べてみたら、けっこう事例があって驚いた。

 これまで知らなかったが、園芸とは一般家庭でも流行っているらしい。


 いくつか見てみたが、この状況に沿ったものは少ない。

 多くは『人間さん、こっちは私有地なので入らないでくださいね』というサインだ。

 さすがにモンスターを想定した柵づくりは行っていないだろう。


 おそらく、大事なのは頑丈さ。

 これがゲームなら、耐久度とかに関わってくるだろう。


 山間で農業をなさっている方のブログで、鹿避けの柵の作り方を見た。

 丸太を槍っぽく削り、明らかに殺意をこめて組んでいる。

 武田の騎馬隊も防げそうだが、素人が再現するのは難しそうだ。


 いっそ、鉄製のものを購入して送ってやるか?

 この穴にはどんなものでも入ってしまう予感がある。


 そのとき、あるネット記事を見つけた。


 昔はロープのようなものがなかった。

 そのため、木の幹や枝をなめして括っていたらしい。


 定期的に少女が小屋から出てきている様子もある。

 おそらく、女性陣が室内で作業しているのだろう。


 次に購入するものは決まった。

 あと観察していて思ったが、木を切るのも時間がかかっている。

 そっちも援助したほうがいいだろう。


 再びホームセンターへ。

 休日の昼間だけあって、なかなか混んでいるようだ。


 まずはロープを購入。

 できるだけ太く、頑丈そうなものを選んだ。

 どのくらい必要かわからないので、多めに購入しておくか。

 余っても他に使えるはずだ。


 そして木を倒すための装備を物色する。


 まずは斧だ。

 しかし、すべて薪割り用の手斧だった。

 やはり昔話にあるような巨大な斧は、一般的には手に入らないのだろう。

 とりあえず必要だろうし、手ごろな値段のやつを購入。


 隣のコーナーにノコギリがあった。

 確かに現代では、木を倒すならこっちだろう。


 電動式も楽そうだが、向こうに電気があるとは思えない。

 その前に、さすがに高くて手が出ない。

 こんなものを購入したら、岬に重課金者と馬鹿にされてしまう。


 カバー付きのノコギリを購入。

 あと娘さんが手伝う可能性も考え、防刃軍手も購入。


 そういえば、木を運ぶ台車もあったほうがいい。

 ここは頑丈さを優先して、いい感じのものを選択。


 配送を勧められたが、明日の午前中になるらしいので断った。

 台車に戦利品を乗せ、ごろごろと歩道を押して帰る。


 アパートに戻ると、それらを穴に落とした。

 この巨大な質量が飲み込まれていく光景にも、ずいぶん慣れた。


 すぐに気づき、さっそく使用してくれた。


 うむ。満足だ。

 これで効率も上がるだろう。


 そういえば、と村のステータスを見てみる。



―山田村―

◆レベル   2(次のレベルまで10ポイント)

◆人口    3

◆ステータス 正常

◆スキル   なし



 ちょっと進んでいる。

 作業が次の段階に移ったからだろう。


 次のレベルまで、あと10ポイント。

 都合よくモンスターでもかかってくれないものか。


 まあ、作業の効率が上がったわけだから、すぐレベルも上がるだろう。

 様子を見ていると、少女が外に出て、いっしょに手伝っている。


 ……家族かあ。


 ふとそんなことを思う。

 感傷に浸るのはよくない。


 さて、そろそろ畳ができないだろうか。

 そんなことを考えていると、携帯が鳴った。


 これから持ってくるという。

 畳下板をセットして、準備万端にする。


 しかし、大事なことを忘れているような気がする。

 しばらく考えて気づいた。


 そういえば明日は岬が来るのだ。

 掃除と茶菓子の準備を忘れていた。

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