第17話 予知夢
今日の夢はなんともハードなものであった。まぁ零もあそこまでの変貌を遂げるということはまず考えにくし、子供が出来たかどうかの判別が3日やそこらで分かるわけもない。厳密さに欠ける点がやはり夢である。だが、茶髪にするというのには少し驚いた。確かに、茶髪も好みといえば否定はしないが、あの大人しめな零が髪色を変えるだと何があった?
「涼さん、どうしたんですか?難しい顔をされていますよ?お口に合いませんでしたか?」
ふと食事中であることに気づき、味覚が舞い戻る。ごはん、あさりの味噌汁、鮭の塩焼き、切り干し大根とひじきの煮物を小鉢にとなんともシンプル、しかしながら俺好みの朝食である。
「いや、いつもながら美味いよ。こんなのが食える俺は幸せ者だな。」
「そ、そんな……これくらい当然ですよ、妻として♡」
自分で妻って単語出して、自分で真っ赤になっている零を見るのも日常茶飯となってきた。まぁ、こんな今にも蕩けそうな顔をしている人があんなに冷淡に、そして狂気に満ちた行動をするとは考えにくい。
「あ、そうそう~なんで茶色にするの?」
「あぁっと、それは……そぇ……」
「まぁ、無理に言わなくていいんだけど。」
「ちょ、ちょっと気分転換に……(卓球部の加藤さんって子が茶髪で可愛くて涼さんの好みっぽいから、先に私で目移りしないようになんて言えませんよ……)」
本日の早朝(涼はあの夢の最中) ある方から電話が来た。
「あ、零ちゃん、おはよう!今、起きてる?」
「雅さん、おはようございます。今でしたら、朝食の準備です。」
「え~、こんな時間からやるの?」
「はい、務めですから」
「うわ~、萩原君はなんて子を嫁に、いや毒牙にかけたのよ」
「そんな毒牙なんて、すごく立派なモノでしたよ。もう壊れちゃうかと思いましたよ。」
「(この子も大概ヤバい子ね)……あ、そうそう今日って萩原君、卓球部でしょ?」
「はい、その様に聞いています。涼さんも卓球ならマネージャーは必要なさそうとの事で、書道部に方に参加したらどうかとお暇をいただきました。」
「(お暇を頂きましたって、この子高校生なの?)……それがね、1年の女子で萩原君の全国時代を見たことがあって、強くて可愛い子が入っているのよ。しかも、萩原君のこと好きらしくて生徒会が部活に参加するって聞いて大喜びらしいのよ。」
「えーーー、で、でも涼さんとは婚約しましたし、他には興味ないって一杯、その……交わりましたし……。」
「そうなんだけど、その子って萩原君のタイプ通りなのよね~。勇人が前に萩原君にエロ本見せたとき、茶髪で短めの人、う~ん、零ちゃん今少し長くなったから、もっと短い時みたいでスリムな感じの人に反応してたって」
「え、え、エロ本ですか?」
「あ、うん。勇人の部屋を掃除しようとしたらあって、問い詰めたら教えてくれたのよ。」
「え、でも涼さんの部屋にはそんなのは……」
「萩原君はそういうのいらないんでしょ。本物がいるからね。」
「そ、それなら良かったです。」
「よくないわよ、いつも反応しない萩原君が反応したってびっくりしてたもん勇人」
「私も見たけど、卓球部の子はエロ本の子の何倍も可愛いのよ。しかも、ちょっと天然なのかわからないけど、たまに練習とかで見えちゃうんだって」
「え、なにがですか?」
「下着とか女の子の大事な所とか……だから、もしかしたら萩原君がそれに欲情して、しかも相手も多分抵抗しないから……」
「えーーーーーー、やだやだやだやだ。ど、どうしよーーー。」
「まぁ、ないと思うけどね。一応、言っておくね。友達とこの前話してたらその子が話題になってたから。」
「雅さん、ちなみにその子はなんてお名前ですか?」
「加藤 雪乃ちゃんって子、検索すれば顔分るよ。有名選手らしいから。あと、今日は通院で来ないらしいよ」
「え、わ、わかりました。」
そして、電話は終了した。
さっそく、検索する。
えーーーー、茶髪に何でこんなに可愛いのーーー。しかも地毛みたいだから、羨ましい。しかも、スレンダーだし、胸もあるし、足も綺麗だし。なんか、涼さんの好みっぽいし……泣。涼さんが……取られ……。
あれ、待って。今日は加藤さんいないのよ、え、じゃあ、そうだわ。
徐にまた電話を掛ける。
「あ、私、東雲零です。今日の午後4時くらいから………ではお願いします。」
そして、今に至る(もう少しで涼も夢の世界から現実に帰る)
「気分転換ね~、まぁ零なら茶色もいいね。」
「はい!ありがとうございます。」
そして、俺は卓球部に参加することとなった。夢とは違い、部員のほとんどが中級者で終始レベルを落として、基礎と実践練習をした。女子の方も練習に加わってほしいとの事で参加したが、こちらの方がレベルが高く、俺も練習になった。夢で見たこの姿はない。
「よっしゃーーー、無事に終わったーーーー」
心が舞い踊りすぎてしまった。声には出していないが、叫ぶことが出来るならば、叫びたいくらいである。そして、生徒会室で着替えを済ませると、ちょうど零から連絡だ。
「部活動お疲れ様です。私の方もそろそろ終わりそうですので、朝に示しました美容院までお迎えをお願いします。
妻 零より 」
うん、妻の多用に引き気味だが、そんなことはどうでもいい。夢のルート回収とならない様にハッピーエンドのフラグのためにいざ参る。
そして、俺は零のいる美容院で、また恋に落ちる。
それをまだ知らずに、俺は美容院への道を行く。
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