第1話 壁(26p)

 でも、それはおかしい!

 だって、もしそうなら他の人は?

 誰も彼もが他人に心を開いて生きているとは、私には思えない。

 誰にでも、目の前の相手に対して、内に秘めた秘密の思いがあるのではないか?

 他人を信用出来ない時が有るのではないか?

 他人を愛せない時も有るのではないか?

 皆、本音だけで生きている訳ではないだろう?

 私だけが特別じゃない!

 誰もかれもが嘘の仮面を張り付けて生きているのではないか?

 世界は嘘で溢れている。

 だって嘘が無いなら、嘘と言う言葉は無いだろう。

 誰もが他人を信じて生きているなら、疑うなんて言葉は無いだろう。

 違うか?

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