4話 霊人《レイド》VS魔人大人2
次に目を開くと、母さんたちが戦っていた場所から随分と離れた、街の中でも高く平原を見下ろせる場所に俺はいた。
目を閉じてからは、一切の移動をしていない。
朝食を終えたあと誰にも見つからないようにここに来て、魔法を使って離れた場所の様子を見ていた。
ここは見張り台だが、今は誰もいない。
もう少しすれば誰かがやって来るだろう。
魔人と普人が争っていた時は、この見張り台も随分と活躍したのだろう。
今では街を襲うのは霊人のみだが、その理由は明らかになっていない。
魔人が街に住むようになってからの出来事だと言うので、原因は魔人にあるのだろう。
幸いなことに、霊人の襲撃はすべて未然に防げているようだ。
先ほどの様子では寝足りなさそうだった母さんに感謝した。
俺は見張り台の四方に置かれた
その内の三つには、羽が四色で彩られている。
そして俺が触れるより前から、残り一つの風車だけはすべての羽が白銀一色に染まっていた。
魔力が込められているこの風車は、この街に害をもたらす者の訪れを知らしめる。
白銀は霊人を指し示し、四方に置くことでその方角をはかることが出来る。
次第に色は他の三つと同じ色を取り戻していることから、戦闘もまもなく終わるであろうことが伺える。
さて、そろそろここから立ち去らないと。
どんな戦いになっているか気になって見に来たものの、見張り台にいるところを大人に見つかればひどく叱られるのだ。
いや、それに一人でどうやって上ったんだと問い詰められるだろう。
俺は風車から手を離し、溜め息を一つついてから呟いた。
「さあ」
何もない、その空間に向かって手を差し出す。
「一緒に踊ろう、精霊たちよ」
自分で口に出していて恥ずかしい台詞だが、他に良い文句が浮かばない。
魔王だった時に無意識でかつ無駄に格好つけた台詞がポンポンと出て来ていた影響か、気をつけている今世でも恥ずかしくなるような言葉がまれに出がちだ。
今世の俺が大人になったら、またあんな臭い台詞を言うようになるんだろうか……。
カラカラカラ……と風車が勢い良く回り始める。
俺の意図を汲んだ精霊たちが、この身体を風で包み込む。
そのまま見張り台から飛び降りると、勢いづくことなく緩やかに地面に着地した。
「ありがとう」
そう礼を告げると、俺の周りを風が一周した。
そして風は少しずつ勢いを落とし、穏やかさを取り戻していく。
風が吹いていった方向を眺めながら、俺は本日二度目の髪の乱れを直しにかかった。
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