3話 転生魔王には友だちがほぼいない2

「それよりクラッド」


 ティーカップを机に置いた父さんが姿勢を正し、珍しく厳しい表情を俺に向けて口を開く。


「もっと同年代の友だちを作りなさい」

「友達……。アゲラタムがいるけど……ダメ?」


 今名を挙げた人物を友だちにカウントすべきか判断に迷うが、残念なことに他の友だちはいない。


 俺の交友関係の少なさを知ると、父さんは一瞬で威厳を崩れさせ、困り顔を見せた。


「あの子だけなのもなあ。クラッドはまだ小さいし、息子の友だちが一人だけって言うのは父さんとしては悲しいし、先が心配だよ」

「多ければ良いの?」

「そう言う訳でもないよ、でもクラッドは寂しくないのかい?」

「うーん、それよりも輪の中に入りづらいの。俺と同じようなのっていないし」

「あー……それは……ごめん……」

「あ、父さんのせいじゃないよ。そんなことで謝らないでよ」


 直接的でないにせよ俺が混血であることを理由にしてしまった。

 意図せず責めてしまったその言葉に落ち込んむ父さんをフォローする。


 元はと言えば俺が混血なのは前世の俺の行動の結果。

 当事者になったからと言って尻込みするのも良くないか。


 とは言え、輪に入りにくい理由は、今世での俺自身のとある言動によるものもある。


「うーん……」


 その時の記憶を思い返し、出そうになった溜め息を無理矢理に誤魔化してうなってみせる。


 一言で言うと俺は小馬鹿にされているのだ。


 その出来事はもう忘れて欲しく、黒歴史を抉るあだ名もそろそろ止めてほしい。

 心底そう思うが、街の子どもたちは容赦なく俺の心を抉る。

 恥ずかしいのを堪えれば良いだけだが、出来ればほとぼりがさめるまで静かにしていたい。

 そんな時はこの街にいる限りは訪れないと予想できるため、手詰まり状態だ。


「そんないやそうな顔して……」


 溜め息は堪えられたが、表情は素直だったようだ。


「な、なんでもないよ。ちょっとは……努力してみるよ」


 どうやって?と内心自分に突っ込みを入れるが、あいにくと答えは出ない。


「クラッドに限ってそんなことはないと思うけど、いじめられたら父さんに言うんだよ」

「ありがとう、父さん」


 父さんに言ったところで何の解決にもならないが、その優しさに俺の心は暖かさを覚えるのだった。


「そう言えば、父さんはどうして母さんと結婚したの?」

「父さんの、一目惚れだよ」

「へー」


 問いかけると父さんはすぐに遠い目をしてみせた。

 これは聞かなければ良かった案件か。


「母さんはさ、強くて気高くて、とても美しくて……」

「ふーん」

「何度もこの街を守ってくれる姿を見ていると、……その、はは。なんか恥ずかしいな」


 聞き始めたのは俺なのに、興味のなさを表情に出してしまったらしい。

 俺の様子に気づいた父さんは予想よりも早く遠い世界から帰還し、照れた表情を見せて話を切り替えた。

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