海豚

海豚いるかは一面の海原をこれでもかと駆け巡り、

見知つた海面天井を突き破り飛ぶ。

さうして太陽を覗き見るのは、

ほかならぬ海豚の所業である。


そしてまた、海豚は人につらまえられる。

捉まえられては背丈ほどの透明壁に強かぶつかり、

浅瀬の海面天井を突き破り飛ぶ。

飛んだ先には何時もうおがあり、

其を食ふのみの縛られた者となるも、

ほかならぬ海豚の所業である。


私は海豚になりたい。

心は海原をすべることなく、

ただひとつ、だらけきつた寂寥せきりようの念だけが蝕むのだ。

嗚、私は海豚になることを望んでゐる。

そして一面の海原を駆け巡ることを望んでゐる。

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