マギ・アカデミア 〜俺は魔導学院で一位を目指す〜
ラムダックス
第1話
--チュンチュン
「んん……」
鳥の鳴き声が聞こえる。
「んあ〜〜……」
どうやら朝になったようだ。
「……ふう」
長い欠伸を終え、俺は上半身を起こした。
「いよいよか……」
いよいよ、今日。待ちに待ったこの日がやってきた。
俺は、頭の方にあるラックに置かれている時計を見る。文字盤には、『6:30』と表示されていた。
「試験まで、あと2時間半。少し早めに出るか」
今から用意すれば、30分ほどで出発できるだろう。ギリギリまで粘って遅れるそうになるよりは、早めに会場についた方が気持ちに余裕ができる。
「よし!」
そして俺は、ベッドから出、顔を洗いに共用の洗面所へと向かった--
★
「あら、おはよう。随分早いんだねえ」
受付には、この宿屋の奥さんが立っていた。
「おはようございます、おばさん! 折角早起きしたので、どうせなら早めに会場に向かおうかなと思って」
俺は軽く挨拶をする。
「おはよう。うんうん、殊勝な心がけだね。何事も先延ばしにしちゃ、最後は自分が困ることになるからね」
「この大事な日に寝坊したら、今までの日々はなんだったんだという話になりますからね」
10年前、魔法が使えるようになってから、毎日修行を欠かさず過ごしてきた。俺みたいな凡才があそこに入学するには、これくらいしないと到底追いつけないのだ。なにせ、世界中から腕に地震を持つ人が試験を受けに集まるのだから。その人達から見れば、俺の実力なんて、井の中の蛙に食べられる蝿、といったところだろう。
「朝ごはんはどうするんだい?」
「軽く外で食べます! ここの料理は美味しいのですが、あまりがっつり食べても良くないかなと思うので」
「そうかい、残念だねえ……試験頑張りなさいな、応援してるからね!」
おばさんが、キラリと歯を光らせた。
「はい、ありがとうございます!」
俺は、宿屋の出入り口へと歩みを進める。ここを出たら、あとは学院に向かうのみ。生きるも死ぬも、今日にかかっている!
そして俺は、街へ繰り出して行ったのであった--
★
「--ここが、王立魔導学院マギカリアか……」
俺の目の前には、それはもう荘厳な建物がそびえ立っていた。何人並んだら埋まるのかわからない程の横幅を持つ門や、天に伸びる塔などなど……
ごくり。滲み出る威圧感に、思わず唾を飲み込んでしまう。
「……大丈夫、俺は出来る。爺ちゃんも言っていたじゃない」
爺ちゃん、俺頑張るからね。そして夢は必ず……
「よし!」
俺は、試験会場である修練場へと向かった--
--修練場は、門から15分ほど歩いたところにあった。思ったより近いところにあり助かった。あまり体力を使うと、魔法の行使にも影響を及ぼすからな。この学院の大きさから考えると、充分良心的な配置だと言えるだろう。
「えっと、入り口は……あそこか」
俺は入り口で厳重な身体検査を済まし、建物の中へと入った。やはり有能な人物が多く集まる場所。世界にとってもその損失は痛手になるのだろう、なにかが起こる前に阻止する体制が整っていると感じられる。
修練場の中は、とてつもなく広かった。いや、その見た目も大きかったのだが、想像以上だったのだ。
「すげえ……」
俺は思わず感嘆の声を漏らした。上は天井まで広く抜けており、周囲には何千人も入るのであろう客席が円状に配置されている。俺の目の前には、いくつものコートが作られており、それぞれ人が集まっている。俺も、あそこに並べばいいのかな?
「俺の受験番号は……3201か」
毎年この試験は4000人前後が受けると言われている。そして受かるのはたったの200人だ。20倍の倍率、なかなかの高さといえるだろう。
コートを見渡すと、3150〜という札が掲げられたところを見つけた。よし、あそこだな。
「--すみません、受験しに来たものですけど」
俺は、受付の人に声をかける。
「はい、おはようございます。受験票をお見せ下さい」
「わかりました」
俺は受験資料と一緒に入っていた受験票を見せる。当たり前だがこれを忘れたら、受験することはできない。まあ、こんなところで抜けているような奴はそもそも試験に受かるかどうかすら怪しいけどな。
「……はい、3201番、プラネトさんですね?」
「はい、間違いないです」
「ありがとうございます、試験開始までしばらくお待ちください」
「わかりました、ありがとうございます」
俺は、コートの後ろにできている列へと並ぼうとする。修練場の壁にある時計を見ると、『8:15』となっていた。ということは、あと45分ほどか。試験自体の開始が9時からで、その前に説明が行われる。早め早めの行動を心がけていないと損をするということだ。
「ちょっと、そこの平民、私の後ろに立たないで下さるかしら?」
え?
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