ep7-4
「あれあれー? キミたちはこのお城の兵士じゃないみたいだねっ! こんな所に何の用かな? わざわざ火事の火元に来るなんて……ここには何もないよ、キミたちの役に立つようなものは何もね! あーっ、でもさっきの光線を見ちゃったなら、気になるかなぁ、気になるよねぇ! もしかしてキミたちもソニアちゃんの魔術の秘密を」
「お喋りが過ぎるぞ、ルキーニ!」
ぺらぺらと喋り出す水色のエプロンドレスの少女を、後ろにいた白いふわふわの小犬が制した。
ルキーニと呼ばれた少女は慌てて背筋を伸ばす。
「ヒンッ! もう、驚かさないでよモツァレラ。人前でしゃべっちゃダメだってば」
「お前は余計なことを話しすぎだ。そこの侵入者の口止めは任せるぞ」
「えっえっ、ちょっとまっ……もう、身勝手だなあ!」
少女と会話した犬は廊下の奥の方へと走っていってしまう。
廊下の先ではソニアの母マリアがバリアを張り、ソニアの部屋から放たれる光線を押さえ込んでいた。5階の廊下は既に火の海である。
「やれやれ。そんなわけだからキミたち。ここで見たものは誰にも言っちゃダメだよ? まァもっとも、死人に口無しって言うけどね!」
バラバラバラ
少女のスカートの中から小さな紙切れが飛び出す。それらは自ら意志を持っているかのように宙を舞い、少女を護るように空中に静止した。
「よし、ツガル! この場は貴公に任せた! 私は先に行くぞ!」
「あっ、ちょ……ちょっとグスタフ!?」
グスタフはトランプを操る少女ルキーニの相手をツガルに押し付けて自分だけ先に行こうとした。
だがもちろん、それを見過ごすルキーニではなかった。
「だーかーらー、ここは通さないんだってば! 2人で仲良くここで寝ていてね、永遠に!」
ルキーニが片手で軽く指示を出すと、二枚のトランプはグスタフの両目をふさぐように飛んでぴったりと顔に張り付いてしまった。
「目、目がぁ! 目があぁぁ!」
視界を奪われてグスタフは両手を宙にバタつかせる。そのまま燃え盛る壁にぶつかっては慌てふためき歩く方向を変える。
「ふふっ、もう一枚鼻と口に貼り付けてあげれば、金色の鎧の彼はもうおしまいさ。キミもすぐに仲間入りさせてあげるから、大人しくしてて……ねっ!」
ルキーニがツガルに向かってトランプを飛ばす。
的は小さいが、遅い。
ツガルは鞘から剣を抜く動作のついでに二枚のトランプを切り捨てた。
「通してもらいますよ、お嬢さん。道をお開けなさい」
「ヘェ……。そう来られるとボクも引き下がる訳には行かないなぁ」
ルキーニが不敵に笑う。
揺らめく炎の中、2人は見つめ合った。
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