第19話精霊使い

「契約完了。です」


 シンシアがそういうとミズキは僕の持つ精霊石に吸い込まれた。


 僕の精霊が吸い込まれるのを確認するとシンシアもウンディーネを精霊石に戻す。

 契約が完了した後の僕たちの周りをうぞうぞと精霊の光が漂う。それは幻想的な光景で。


「もう二・三匹契約したほうがいいのかな?」


 僕の為に集まってくれたことを思うと申し訳なく、シンシアに確認してみる。

 シンシアは首を横に振ると。


「いきなり…………複数持ちは止めた方がいい…………です。慣れるまではその子に専念してあげた方がいい…………です」


 その言葉で思い出した。

 精霊魔法を教わり始めてから1週間が経過した頃。精霊との契約について僕は説明を受けた。


 この世界の精霊使いは自分の魔力が許す限り精霊と契約をする事が出来るらしい。

 時には低級精霊と契約したり、時に上級精霊と契約をしたり。そういった契約に関しては個々に委ねられる。


 よって、複数の。場合によってはこの場の全員と契約する事も不可能では無いのだが…………。


「精霊使いは精霊を使役する者…………。です。増やせば増やすほどに親密度は変わります…………です」


 実際。シンシアは各属性を一匹ずつ契約しているが、使役できるのはそのうちの数匹だけらしい。


 僕は師匠の意見に納得するとその場での契約を諦めた。



 ・ ・ ・ ・


 ・ ・ ・


 ・ ・


 ・


「いけ。ミズキ!」


 僕の指示を受けて水の精霊であるミズキが『ミィ』と返事をする。


 小人のような形で宙にプカプカと浮かんだミズキは掌を突き出すと掌サイズの水玉を作り出す。


『ミーーーィッ!』


 そしてそれを突っ込んでくるゴブリンに向けて打ちはなった。


「ゴブッ!??」


 ゴブリンは水滴を受けてまさに冷や水を浴びせられたかのような顔をしている。

 その隙に僕はゴブリンに接近して剣で切り捨てた。



『ミミッ!?』


 ゴブリンが絶命すると同時に後ろから声がする。ミズキがなにやら訴えたいのか?


「レベルが上がったみたい…………です」


 シンシアの説明に僕はミズキのステータスを見る。



名前:ミズキ

種族名:水の精霊(低級)

レベル: 2


HP 12/12

MP 8/12

ST 4/12

STR 5

DEX 5

VIT 5

INT 12

MND 12


スキル:ウォーターボールLv1


 確かに上がってるな。


「HPやMPは解るけど。STって何?」


 僕はステータスに見慣れない項目があるので聞いてみた。


「それはサモンタイムといって召喚した精霊がこの世界に留まる事が出来る時間の事…………です」


 なるほど。ウル○ラ○ンみたいなものか。活動限界があるという事なのだろう。


「通常。STは何もしなければ1分ごとに1消費する…………です。でも、戦闘なんかで消耗が激しくなると…………あっという間に消費する…………です」


「僕はミズキを出してからまだ5分ぐらいだと思うけど、レベルアップで上がった分を計算すると10は消費してるってこと?」


 僕の言葉にシンシアは頷く。なるほど…………。これがシンシアが複数契約を止めた理由か。


「STが尽きると精霊は精霊石に戻る…………です。そこでSTが回復するまでは眠りについている…………です」


 精霊石を精霊の住処といっていたのはこういう理由らしい。


「どのぐらいで回復するんだ?」


 回復量が気になった。


「STは1分で大体1回復する…………です」


 なるほど。つまり10分で回復させてちょっと狩りをして更に休憩をするとい繰り返しになる。

 ん? でも待てよ?


「今のゴブリンの共闘で経験値が入ったんだよね? だったらもっと強い敵に攻撃させて僕が倒せばあっという間にレベルが上がるんじゃ?」


 僕の言葉にシンシアは首を横に振る。


「あくまで召喚した精霊が倒さないと経験値入らない…………です。今のはSTによる経験でのレベルアップ…………です」


 ふむ。どういう事か? シンシアの説明を詳しく聞こう。


「精霊はこの世界に顕現していると徐々にその力を大きくする…………です。世界に留まる時間が長ければ長いほど…………力を発揮できるようになる…………です」


「つまりSTを1消費するごとに経験値が入る。ミズキはそれでレベルが上がったって事でいいのかな?」


 僕の説明にシンシアはコクリと頷いた。上手く説明できたようで嬉しそうだ。


「ちなみにミズキは低級精霊みたいなんだけど。レベルが上がればランクは上げられるの?」


「はいです。ある程度力をつけた精霊はクラスチェンジをする事で上位の精霊へと格を上げる事ができるようになる。です」


「それってどうやるの?」


「精霊石を使う…………です」


 ここで再び出てくる精霊石。


「精霊石は精霊にとって命の源も同じ…………です。それを吸収することで高い次元に到達することが可能…………です」


「つまり。ミズキもいずれは精霊王スピリットロードになれると?」


 精霊には全部で5段階が存在しているとシンシアの授業で習った。


 低級精霊…………自然界の何処にでも居る属性の精霊。


 中級精霊…………子供ほどの大きさと人格を持ち、主の指示を受けてある程度自由に行動する事ができる精霊。


 上級精霊…………人間とほとんど変わらない大きさで顕現し、主の意を汲み取る程度の知能を持ち高度な自然現象を操ることが出来る精霊。


 大精霊…………属性の現象を大規模で発生させる事が出来る存在で高位の悪魔と同等の存在。


 精霊王…………現世で確認できるのは各属性で1柱ずつの計8柱。神話における神の従者としての立ち位置で存在する。ドラゴンロードにすら傷を与える存在。


「理論的には可能…………です。でも実質的には不可能…………です」


 シンシアは言いずらそうに言葉を切る。


「何故?」


「精霊石。高い…………です。自分で見つけるにしても時間かかり…………ます。です」


 なんでも、精霊石は希少品らしく、【精霊回廊】というダンジョンにいるエレメンタルシリーズというモンスターが持つレアドロップらしい。

 毎日篭ったとしても1週間で1個出れば良い方らしい。


「そして。精霊石…………精霊を契約するのにも使います…………です」


 精霊石に住めるのは1個の精霊石につき1匹だけ。だから複数を使役するには精霊石の数がまず必要になる。


「中級精霊にクラスチェンジに精霊石20個必要です。上級には100個。それ以上は条件が判らない…………です」


「それだと、シンシアのウンディーネは上級だよな? シンシアが精霊石で上位にしたの?」


 僕の疑問にシンシアは首を横に振る。


「ウンディーネはママから託された精霊…………です。優れた精霊使いは高位の精霊に好かれる事がある…………です」


「つまり。高位の精霊を使役するなら上位の精霊と契約する。もしくは譲ってもらうって事?」


 再びコクリと頷く。


「と。ミズキのSTがそろそろ尽きそうだ」


 話している間にミズキの光は淡く、薄くなりつつあった。これは一度戻さなければ行けないのだろう。


「これだと相当不便だな。何か効率よい方法無いの?」


「以前。精霊石を買うついでに買った精霊石の欠片をだす。です」


「これか? 1個で銀貨5枚したんだよな。とりあえず必要というから全部買い占めたけど」


 お陰で金貨が50枚ほど飛んでしまった。


「精霊に渡す。です」


 僕は手に持っている精霊石の欠片をミズキへと渡す。

 パァーとミズキが輝いたかと思ったら身体の光がハッキリと見えるほどに回復した。



名前:ミズキ

種族名:水の精霊(低級)

レベル: 2


HP 12/12

MP 12/12

ST 12/12

STR 5

DEX 5

VIT 5

INT 12

MND 12


スキル:ウォーターボールLv1


「なるほど。こうして回復してやれば良いのか」


「でも。お金が掛かる方法です。精霊石より安いけど、精霊使いは緊急時にしか使わない…………です」


 なるほど。普通ならそこまで無限にお金なんて無いし、都合よく精霊石の欠片が売っている事も無い。何故かあの店には大量に積んであったが、それも何か理由がありそうだ。


 その後、暫くの間ミズキを使ってゴブリンを狩って見たところレベルが5まで上がった所で切り上げる事になった。

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