第189話 本戦組み合わせ

カルナギとの恋人の話はニジナの口車によってうやむやにされ、結局、なんの進展もなかった……カルナギはどうもニジナのことを信頼しすぎなんだよな……



次の日、いよいよ、モンスター闘技会の本戦、やっとここからが本番である。


「あっ、見て、ティフェンとジンタ、ブロックが違うから決勝まで当たらないみたいだよ」


本戦のトーナメント表を見ながらニジナが嬉しそうにそう言う。別に決勝で俺とティフェンが戦うとは決まってないのに、もうその気になっているようだ。


「本戦に出るのは16チームか……」

シュラがトーナメント表を見てそう呟く。


「1日でこれ全部戦うの?」

ニジナの間抜けな質問に、ティフェンが答える。


「本戦は一対一で戦う方式で一試合で五戦もあるから、1日で全試合やるのは無理よ、だから今日は行われるのは一回戦だけだよ」


そうなんだ……知らなかった。


対戦スケジュールを見ると、俺もティフェンも午後からの対戦のようなので、まずはライバルの様子をみようと、コロシアムにやってきた。


「いきなりジュアロンが出る見たいよ」


優勝候補の一人で、変態オヤジのジュアロン、どんな戦いをするのか……


「あれ、ジュアロンのチーム、三体しかモンスター連れてないね」

確かに見ると、三体のモンスターしか連れていないようだ。ジョアロンは召喚士じゃなく、テイマーなので、召喚石からポンと出すってことはないと思うけど……


「もしかしたらジョアロンの奴、三体で勝ち抜くつもりかもしれないわよ……完全に舐めきってるわね……」


「そうか、五対五の戦いだから、二体不戦敗でも、三体が勝てば勝ち進めるんだ」

「だけどあれだと一体でも負けたら終わりだよね、そんなリスク負う必要あるの?」

「まあ、ジュアロンはアレだからね……」


ジュアロンはアレの一言で説明がついてしまった。



ジュアロンチームの先鋒は禍々しい鎧のリビングメイルだった、あんなモンスターもテイムできるんだ……


相手チームの先鋒のモンスターは大きな猪のようなモンスターで、ティフェンが言うにはジャイアントキラーボアというモンスターらしい。


「どっちが強いんだティフェン」

「ジャイアントキラーボアもかなり強いモンスターだけど……ジュアロンのあのモンスター、もしかしたら普通のリビングメイルじゃないかも」


「普通じゃないってどういうことだ?」

「普通のリビングメイルは鎧なんかに低級ゴーストとかが取り憑いてるものなんだけど、あれには物理的な力を感じる……」

「じゃあ、普通に鎧を着ている何かってことか?」

「そうね、普通のリビングメイルはネクロマンサーの管轄だし、テイマーが扱うモンスターじゃないしね、おそらくはリビングメイルとは別物……」


「あっ、試合が始まるよ」


ニジナがそういうのでコロシアムの方を見ると、すでに試合が開始されていた。


ジャイアントキラーボアがその大きな体で強烈な突進攻撃を繰り出す──リビングメイルもどきはその場で立ったまま動こうとしない。


ジャイアントキラーボアの突進が直撃する寸前で、リビングメイルは持っている剣をジャイアントキラーボアに向けた……ただそれだけの動作であったが、剣は見事にジャイアントキラーボアの眉間に刺さり、その突進は停止した。


ジャイアントキラーボアはドサっと横に倒れて動かなくなる……


「勝負あり、勝者、ジュアロンチーム先鋒!」


審判の声で勝利が確定する。


「あっさり倒したように見えるけど、あの動きは普通じゃないわね」

「どういう意味だティフェン」

「剣術の心得がないと、あのスピードで突撃してくる敵の急所を一撃で剣を刺すなんてできないわよ」


「なるほどな……でっ、ということはどういうことだ?」

「剣術の心得があるモンスターの可能性があるわね」

「そんな器用なモンスターいるのかよ」

「亜人タイプのモンスターなら武器くらい使うのはたくさんいるでしょうけど、達人クラスの剣術使いとなると珍しいわね」


「次の試合が始まるよ」

ニジナは試合を楽しんでいるようで、嬉しそうにそう言った。


ジュアロンの次鋒は髪が炎のように燃えている巨人であった。


「あれがイフリートなのかな」

ジュアロンが炎の魔神イフリートを従えているのは前に聞いていたのでそう思ったのだが……


「違うわ、あれはムスンテカよ、炎の巨人族ね、かなり強い種族だけど炎の魔神よりかなり格下よ」


ティフェンもさすがは高名なテイマーなだけあって博学だ、解説には適任で助かるな。

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