第41話 悪霊退治
俺たちは屋根裏部屋の霊から話を聞いて、本当の悪霊は俺と部屋で話をしたメイドだとわかった。このままあのメイドを放置しておくと、仲間にも危険を及ぼす恐れがある。それと俺を騙した償いをしてもらう。すぐにニジナと俺は、メイドを探す為に下へと降りた。
ニジナが気配を探しながら宿を回る。ニジナってこんなこともできるのか・・そんな感じに感心していると、彼女は自分の部屋で立ち止まり、表情を変えた。
「ここにいるわ・・・」
「中にはシュラザードがいるよな。大丈夫か・・」
「大丈夫じゃないでしょうね・・」
そう言いながらニジナがドアを開ける。
部屋にメイドの姿はない。シュラザードがベッドで寝ているだけである。
俺たちが部屋に入ると、無機質にシュラザードの体が起きる。そして怪しく微笑むと、こう言ってきた。
「お客様・・悪霊は退治・・・出来ましたか・・・また悪い霊力を感じますけど・・」
明らかにシュラザードの喋り方ではない・・どうやらメイドに乗り移られたようだ。
「お前、あのメイドだな。とりあえずシュラザードの体から出ろ」
俺がそう言うと、彼女は怪しく微笑みながらこう答えた。
「あら・・お客様・・いいんですか・・今なら私と・・触れ合って・・すごくエッチなことができるんですよ」
そう言いながらメイドに乗り移られたシュラザードは、服を脱ぎ始める。
ふっ・・このメイドは何か勘違いしているようだ。俺がただ女とエロいことをしたいと思っているらしい・・否! 俺の逸物は人外にしか反応しない。人間の女のそんな色仕掛けなど通用しないぞ。しかし、ニジナは何を思ったのか俺の目を隠して彼女を見えなくする。
「ちょっとジンタは後ろ向いて下がってなさい」
そう言って、俺を後ろに押し退ける。
「・・・なんですか・・お客様・・怖い顔をして・・私に何かすれば、この体も傷つくかもしれませんよ」
「大丈夫。その体の人は、私より格上のプリーストです。神聖攻撃には耐性がありますから」
ニジナがそう言うと、シュラザード、いや・・その体に取り憑いているメイドの顔が歪む。
「ホーリーライト!」
すごく一般的な神聖攻撃魔法をニジナはシュラザードに放った。神聖な光がシュラザードを包む。メイドは苦しそうにもがき始めた。
「やめろ・・・やめろ!」
そう叫ぶとシュラザードの体が力なく崩れ落ちる。どうやらシュラザードの体から出たようだ。よく見ると半透明のメイドが、シュラザードの後ろに立っている。
「くっ・・私の邪魔をするな・・・私の自由を奪うな・・私に苦しみを与えるな・・殺す・・殺す・・殺す・・お前ら全員殺す・・・」
メイドの表情が怖い・・これが悪霊の正体なのだろう。
メイドの周りに白い靄のようなものが複数現れる。靄はどんどん濃くなり、人の形になる。そしてメイドがその人影に呼びかける。
「ほら。私を好きにしたいのなら、あいつらを殺すんだよ」
そうメイドに言われた人影たちは、すごい形相で俺たちに襲いかかってきた。すぐにニジナが神聖魔法を唱える。
「ホーリーライト!」
神聖な光が人影たちに放たれる。だが、光を受けた人影に効果があるようには見えなかった。
「バカね! そいつらは純粋な霊体だよ! 神聖攻撃など効きはしないわ」
メイドがそう説明してくれる。
人影たちはニジナを取り囲んでいく。どうも人影は全員男の霊のようで、いやらしくニジナの体に絡み付いていった。どうやら霊体でも、やりようによっては触れるらしい。
「もう・・いい加減にしなさい!」
ニジナは散々体を触られて怒ったのかそう叫んで魔法を放った。
「ターン・アセンション!」
虹色の光が白い人影たちを包んで消し飛ばす。あれ・・ターン・アセンションってレアな魔法じゃなかったけ?
「ば・・・バカな・・あなたはプリーストじゃないの!」
メイドもその魔法に驚愕の声をあげる。
「覚悟しなさい、悪霊さん。今、昇天させてあげるから」
そう言ってニジナはメイドに躙り寄る。待てよ・・このままあのメイドを昇天させるのは勿体無いぞ。どうやら霊体でもやりようによっては触れるらしいし・・何よりあの体はエロい。
ニジナがメイドの向けて、昇天の魔法を放とうとする。メイドの顔も恐怖で歪む。その瞬間、俺は叫んでいた。
「待て、ニジナ! そこまでする必要はない!」
それを聞いて一番驚いていたのはメイドであった。
「どうして・・・どうして私を助けるんだ・・・・私は悪だぞ・・私は汚れている汚い存在だ・・・誰も私を助けてはくれない・・・誰も私を助けてくれなかった・・・なのになぜお前は私を助けるんだ!」
そう叫ぶと、メイドを包んでいた黒い靄が弾け飛んだ。メイドは力なくその場に崩れ落ちて膝をつく。そんな彼女にニジナは近く。
「悪いけど・・私はあなたを助けるつもりはないよ・・」
そう言って終わりにしようと魔法を放とうとした・・その時、意外な人物から声がかかる。
「待ってください! どうか・・どうかその辺で勘弁してください!」
そう叫んだのは、部屋に飛び込んできたこの宿のおばちゃんだった。
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