背の高い女

ツヨシ

第1話

僕の家の近くにブロック塀があり、その先はちょっとした空き地となっていた。


ある日のこと、そのブロック塀の向こうに女がいた。


丸顔で髪が長くて目の大きな女で、無表情で僕のほうを見ていた。


それを見て僕は思った。


――でかい女だなあ。


ブロック塀の高さは知っていた。


たしか160センチちょっとくらいだ。


そのブロック塀よりも首と頭が全て上に出ているということは、推定ではあるが190センチくらいはあるだろう。


十五歳にして180センチある僕よりもさらに高い。


僕でもブロック塀の横に立ったら、それより上になるのはせいぜい口から上だけだ。


女はじっと僕を見ていたが、僕は無視して通りすぎた。なんだか妙に気味が悪かったからだ。



それから時折、女を見た。


最初は気がつかなかったが、ある日を境にふと違和感を覚えた。


空き地は妙に縦に長く、僕の通る道側の長さはけっこう短いのだが、それでも少し斜めから女を見ることがあった。


そのとき、正面から見たときと違う感じを受けたのだ。


それはその女が経っている位置が、僕が最初に思っていたよりも、遠いのではないかと言うことだ。


――いや、まさかね。


勘違いだと思うことにした。



それからしばらくして、また女に出会った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る