私の死後は私が天使

コルフーニャ

第1話 クールにいくぜ!

ピロピロリー♪ピロピロリー♪




悪魔からメールが来ました♪悪魔からメールが来ました♪




カタッ


「さて、今回もクールに始めるか」






 二千四十年、それは、私が亡くなってから十年が経った日の事でした。


初めまして!私の名前は佐々木ゆいな、この世界に住んでまだ十年、ピチピチの十六歳の女の子です。




「おい論外、そろそろ出かけるからそこに落ちてる武器を全部拾え」


「ろ…論外って私の事ですか!?いつからそんな変なあだ名になっちゃったんですか私!?」




 私の前で弓や銃やら、色々な武器を背負ってるこの男性は千利休大和さん、私よりここで百年生きている二十歳の男性です。


おっと、少し言い忘れてた事が一つ、私達は一回死んで、ここ天国に長い間住んでるわけですよ!




「おい何ぼーっとしてやがる、戦力にもならないうえに歩く事も出来ないなんて、本当論外中の論外だなお前は、早く来ないと置いていくぞ」


「ま、待ってくださーい!」




 ここは天国です!百年間、千年間、何年、生きようとも死ぬ前の姿や運動能力は一切老ける事無く、私達はここでのーんびり暮らしている訳です。


ですが、ここに来てからは地球で過ごした時の記憶がほとんど消えてるというか、ぼんやり覚えてるというか、死んだ時の記憶さえ覚えていないのです。




そこで私に過去の事を思い出させてくれると言ってくれた千利休大和さんに、生き返らせてあげるから俺について来てくれ、と頼まれたので仕方なく私はついていってるって訳なんですよ。




「おい論外! 歩くスピード遅えぞ、俺の話を盗み聞きして、土下座をしてまで俺の仕事についてきたんだ、妄想に浸りたいなら帰ってもらうぞ」


「あわわっ!?その事は忘れて下さいってば!」




 ばれたら仕方ありません…大和さんは死んだ状態から生き返るための仕事をしているらしく、私も彼に続いて生き返るため、大和さんのお仕事のお手伝いをしているのです。


それにしても私は大和さんに生き返る方法なんて全く教えてもらえる訳もなく、彼について行っちゃってるんですよ!




「あ…そういえば大和さん…仕事内容、まだ聞いてないんですが…」


「それはまだ教える訳にはいかないな」


「は、はぁ…」




現地に行くまで教えたくない理由があるって事ですかね……。


ひょっとして大和さん誰もいない場所で私とえっちな事するのが目的なんじゃ……。




「二十時到着、お疲れだったな論外」


「もぉ、その酷い呼び方やめて下さいよぉ~!ってここって!?」




私の目線先の上を眺めると先が見えない程大きい扉が立っていました。




「さて、ここに入ってもらう前にお前に二つだけ約束をしてもらう」


「約束ですか?」




どうやらここから先は仕事についての本格的な話になりそうな予感です。




「では一つ、お前の見た目は十六歳だったよな?」


「そうですけど…」


「でもここで生きた十年間を合わせるともう大人なんだから、その高校生を気取った喋り方はやめてくれ」


「わああっ!!! ほ、ほうっといて下さいよぉ!」




どうやら全然本格的な話じゃなかったようです。




「まあ今のはどうでもいいとして」


「どうでもいいって!私少し傷ついたんですからね……」


「そんじゃ、こっからはまじめな話だ」




最初からして下さいよぉ…。




「俺達が今いるのは天界っていうのは知ってるよな」


「天国って事ですよね!」


「地球で死んだ者は地獄か天国、どちらかに住む事になってるんだ、その二つの世界には地獄門と天界門が存在していて、その門から通じてる場所、それが天界から地獄へと繋がった冥界外がなんだ、そしてその天界門と地獄門を守ってる二種類の生物が誕生したんだ、それが天使と悪魔、お前も一度は聞いた事があるだろ」




地球での記憶はぼんやりしか覚えてないですが、それはどうやら覚えてるようです。




「それで二つ目の約束だが、悪魔は周りにうようよいやがる、身の危険を感じたらすぐに逃げてくれ」


「は…はい!」




大和さんの目つきが変わったのに少し驚いたところで私は一つ質問をしてみました。




「天使と悪魔がいる事は分かったんですが、両方一体何から天国や地獄を守ってるんですか?」


「それを今からお前に見せるって訳だ」


と大和さんが一言呟いた後、門を守ってると思われる門番のところへと向かいました。




「あれれ…あれは一体…」




門番さんの姿は人間そのものなのですが、背中に羽が生えてるのがここから見えます、天使があんな人間じみたおじさんだったなんて…




「おい論外!ここを通るぞ、さっさとしろ!」




遠くから大和さんが私を呼んでいる声が聞こえるので私は駆け足で大和さんの場所へと向かいました。


そこには背中に羽が生えた老人天使が立っています。




「この門に通るのはお主ら二人じゃな、ではいって参れ」




老人がそう言い放った途端私達の周りから謎のオーラが染みたものが体全身を覆うように飛び跳ね、辺りの


風景は暗闇に染まっていました。




「ここが冥界外だ、目が慣れるまで三十分待つぞ」


「わ、分かりました!」




私は心の中で少し驚きながら、辺りを見回して三十分待つ事にしました。




「や、大和さん三十分経ったと思うんですが天使が見当たらないんですが!」


「これだけ経てば後ろの門くらいは見えるだろ、さっきから天使は周りにかなりいる、危なくなったらすぐ門に向かって走れ、お前なら自動的に天界の中へと入れるからな」


「大和さんは天使がどこにいるか見えるんですか?」


「俺は気配であいつらがどこにいるか分かる、目を使う必要なんてないんだ」




大和さん私に気を使って…。




「おい論外、弓を貸せ」


「は、はい!」




私は大和さんに弓を渡すと、大和さんは力いっぱいに弓を引き狙いを定めます。


大和さんは静止したまま、目標に弓を向けると力いっぱいに引いた弓が放たれ、目標の生物に弓矢が刺さる音が聞こえました。




「大和さん…?一体何に向かって弓を放ったんですか!」


「何をいってやがる、俺がクールに悪魔を仕留めたのに気付いてなかったのか?」


「や…やっぱり悪魔って悪い人なんですか!」


「ああ、悪魔の気配が消えた、確実に死んだだろう」




大和さん…百年間もこんな仕事をしていたのでしょうか…と私が疑問に思った処、大和さんから先に私へ語り出してきました。




「俺はこの百年に一万体は悪魔を仕留めてきた、理由が無いと思うか?」


「そ、それなりに悪いことをしてるとか」


「それなりにだったらいいんだがな…悪魔と天使の全体の数は最初は同じだったはずなんだが、百年で一万体は悪魔を倒したはずなのに、悪魔の数が天使の数を圧倒的に上回っている。俺がここに入って一年もたたない頃、俺は天使と悪魔が戦ってるところを見ていた、そこで天使は油断したせいか、バランスを崩し悪魔に首を思いっきり噛まれたのが見えたその瞬間だった、噛まれた天使は悪魔になってたって事もあったんだ」


「じゃあ天使を仲間にして、そんなに数が増えちゃったんですか…」




すると、大和さんは少しためらいながら言った。




「いや、天使の数はあまり減ってないんだ、俺の予想だが、あんなに数が増えたんだ、考えられるのは一つだけ、脱走を防ぐため地獄の住人に噛みつき仲間にしたとしか思えない」


「ひ…人が悪魔になってるんですか…」


「ただの予想だ、間に受ける事はねえよ、それより予備の矢をそこから取れ」




驚きを隠せなった私に向かって大和さんは何事もなかったように私に頼みました。




「もし、悪魔が地獄の住人から悪魔に引き込んだからって同情はするなよ、あそこに入った奴はとんでもない悪さをした奴だけだ、そもそも助ける方法も皆無だし、それにもう犠牲者を出さないために俺達は悪魔を全滅させようと思っている、頼むから邪魔だけはしないでくれよ」




悪魔を放っておくと私達も悪魔になってしまうっていうのは分かりました…。




「は、はい!」




私が勢い余って返事を返しながら弓矢を渡すと、私は疑問に感じていた事を質問してみた。




「そういえば、なんで弓なんかで悪魔を倒そうとしてるんですか? 銃とかのほうが殺傷力は高いですし、弓矢より遠距離で撃てる銃もありますよ」




私がそう言うと、大和さんは言いなれた口調で話した。




「銃は射撃音がうるさいからここの場所も見つかってしまうし、弓矢の方が扱いやすいんだ、悪魔の弱点、それは脳だからな、音も少ないこの武器で悪魔の脳を捕えたほうがいいんだ、それにクールに倒すのが俺の流儀だからな」


「昔に使われていた武器の使いどころですね!あれ、大和さん携帯が鳴ってるみたいですよ」




私が報告した後大和さんが携帯に触れた瞬間、その携帯は鳴り始めた。


ピロピロリー♪ピロピロリー♪




メ、メールかな……?


悪魔からメールが来ました♪悪魔からメールが来ました♪


カタッ。




「さて、今回もクールに始めるか」と一言言い放ち大和さんは真っすぐ歩いていきます。


「おい論外、一回天界に戻るぞ」


「は、はい!」


私達はここを後にし、一回天界の中に戻る事にした。




天界についた私は一つ気になっていたことを大和さんに聞いてみた。


「大和さん、さっきのメールの相手って一体誰なんですか?」


気になるのも無理不思議ではない、悪魔からメールが来ましたと、というあの音が着信音


なのか疑問に感じたので私はとりあえず聞いてみた。


「これが気になるのか?」とポケットから出したのは、さっき取りだした携帯でした。




「この携帯は天使と悪魔だけが持っている通信機のようなものだ、悪魔からメールが来ると悪魔の着信音、天使からメールが来ると天使の着信音がなるように出来てるんだ、


元々はどちらかの門から脱走者が手強い時に呼ぶ連絡用だったが、天使と悪魔の中は悪く


今まで一度も使った事がないらしい」


そういい、ポケットに携帯を戻すと、大和さんは続けて喋り始めた。


「それと、悪魔にもいい奴が一人だけいてな、そいつに悪魔達がどういう行動を取るかスパイをしてもらってるんだ、俺はそいつに会いにいって情報をもらいに会いにいくつもりだ」


「あのぉ…わ、私は行ったら迷惑でしょうか?迷惑じゃなければ是非お供をさせてほし…」


「迷惑だ!」


わ、分かってましたよ…


私が悲しんでると、大和さんは話を続けました。


「その悪魔と会う前にまず大天使カミネスに会って渡してもらってほしいものがあるんだ、


お前には荷物運びをしてもらう」


「ま、任せてくださ~い…」




少し苦笑いになりながらその天使さんの元へと私達は向かいました。

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