16#それぞれの旅立ちの時

 「あれ?地面に散らばってた割れた風船は?」


 「あそこの草原で、全部花になってるよ。」


 「うわー!!女王様の『儀式』のフィニッシュと同じだ。」


 「ああやって、『鳥』と生きてきた証を膨らまし割った風船に託して、皆其々の転生の空へ旅立っていくんだ。」


 ハクチョウの王様と、この『バードランド』の支配鳥のハクチョウのブルンガ大王は、今日旅立つ番の『死に体』鳥の身支度を感慨深げに見詰めていた。


 「そうだ。そこのフラミンゴとヒドリガモさんの風船回収するよ。

 ほら、こっちに持ってきて!!今日旅立ち何でしょ?」


 「嫌だよ。」「それはちょっと・・・」


 『死に体』フラミンゴのショーと、『死に体』ヒドリガモのニドは、ブルンガ大王に丁重に断った。


 「ベキィさん・・・この割れた風船あげる。

 僕は、永遠にこの割れた風船と繋がってるからね・・・」 


 『死に体』フラミンゴのショーは割れたピンク色の風船を、涙で顔をクシャクシャにしているフラミンゴのベキィに手渡して、


 「さようなら・・・もう一度『フラミンゴ』に転生するから。

 今度こそ、マトモなフラミンゴになるよ・・・じゃあ、翼に気を付けてお元気で。」


 『死に体』フラミンゴのショーは、ベキィに別れを告げると、今日旅立ちの『死に体』の鳥達の列に向かって飛んでいった。




 「女王様、この私の膨らませた風船。カロさんに渡して。

 これを、私だと。私は此処に一緒だと告げてね・・・頼むわよ。ハクチョウの女王様。カロさんを宜しくね。」


 『死に体』ヒドリガモのニドは、割れた水色の風船をハクチョウの女王様に託すと、そそくさと『死に体』鳥達の列に向かって翼を拡げて飛んでいった。




 「そろそろ、私達もおいとましましょ。」


 ハクチョウの女王様は、他の一緒にこの『バードランド』へやって来た鳥達に言い聞かせた。


 「ちょ、ちょっと待って!!」


 マガモのマガークは、慌てて声をあげた。


 「女王様は、空を飛べない身体じゃなかったっけ?クジャクさんも遠く飛べないし。

 そもそも、女王様もクジャクさんも風船をいっぱい身体に付けて・・・全部『異能力鳥』の魔力で、アドバルーンに合わさってから・・・使いものにならなくなったんじゃ?」


 「使いものにならなくなっただって?!私は風船を『再生』する能力も、吐息をヘリウムガスに変換する能力。知ってるよね?」


 ハクチョウの女王様と王様は、アドバルーンになった後に魔術が解けて、ゴムがお互い引っ付く位に伸びきったゴム風船を嘴に含むと、クチャクチャとガムのようによーーーく噛むと、



 ぷぅ~~~~~~~~~~!!



 と、風船ガムのように膨らまし、出来上がった風船を紐で次々とハクチョウの女王様とクジャクのジャニスの身体にいっぱい結び付けた。



 「よし!!完成よ。」


 ハクチョウの女王様と、クジャクのジャニスは、プカプカといっぱい付けた風船で宙に浮かび上がっていた。


 「じゃあ、私達も『秘密の湖』に戻るけど、あんたのこさえた『バードランド』。宜しく頼むわよ。

 素晴らしいよ、『バードランド』。

 あんたはとっても私の『誇り』の息子よ。」


 ハクチョウの女王様は、風船でプカプカと宙を掻いて息子のブルンガ大王の頬に、チュッと嘴でキスをした。


 「ママ・・・」


 ブルンガ大王は付けた風船の高度をどんどん揚げて飛んでいく、ハクチョウの女王様達を見上げながら翼で手を降ると、前を向いて集まってきた『死に体』の鳥達に号令をかけた。


 「皆、新たな『生命へ』旅立ちの時だよ。

 皆、後世に幸あれ!!」


 

 ぱああああああ・・・



 「下の『バードランド』が神々しく光輝いたよ。」


 「皆、光の束になって飛んでいく・・・」


 「そして・・・雲間の一筋の光に向かって飛んでいく・・・」


 「神秘だ・・・生命の神秘だ・・・」


 「あっ!!フラミンゴとヒドリガモが!!」


 「皆ぁーーー!!達者でなぁーーー!!」



 ハクチョウの女王様とその御一行は、転生の空へどんどん旅立っていく『死に体』鳥達とランデブーしながら、『秘密の湖』へ向かって飛んでいった。

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