7月~貴女の魔法使いに~
「海、ですか?」
夏の日差しが照りつけるある日。僕の仕える屋敷の若き主である女性は言った。「ええ」
なんでも、やっと取れた休暇を使って、ご友人様たちと海へ旅行に行くらしい。
海に行くのだから水着が必要。だから僕に声をかけた。僕は彼女の服飾品の管理を任される、スタイリストのような立場だから。
「リクエストはありません。あなたのセンスを信頼していますよ」
「わかりました。あの御方もご一緒ならば、貴女を一番美しく見せるものを選ばなければですね」
「そ、それは!」
彼女は頬を朱に染める。自分で言っておいて、胸が痛むのがわかった。
想いを寄せる相手には、美しい姿を見て欲しいもの。それは僕も同じ。
だから僕は笑顔を装備して、貴女の魔法使いになりましょう。
魔法使いは姫と踊ることはできないけれど、それで貴女の笑顔が見られるならば。「まあ良いです。頼みましたよ」
僕は胸の痛みを魔法に変えて、美しい貴女を王子のもとへお送りしましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます