魔法の家

「お茶淹れたよ?」

「ごめん、今会議中!」


二人でいるのに。


いつものようで、いつもじゃない。

あなたも、私も、仕事中。


キーボードを叩いているとき。

ヘッドセットに耳をこらしているとき。

うわずる声でマイクと話をしているとき。


あなたの足音がぱたぱたと聞こえていた。


「お昼くらい、一緒に食べよう?」

「ごめん、私、昼休みまであと少し。」

「じゃあ、待っているよ。」


あなたの笑顔といつものリビング。


あなたはカップラーメン。

私はレトルトカレー。


食後はベランダで、あなたは植物の世話をする。

私は洗い物をしながら、窓越しにそれを眺めている。


昼休みが終われば、また、別々の部屋へ。


違う会社と違う仲間、違う仕事。

違う世界と繋がっている。


コロナウィルス対策で、唐突に始まったテレワーク。


『不思議な感じ、だね?』

二人の声が重なった。

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