第11話 脱出?
ブチッ。
「や、やった!」
数十分後。リアは自分を縛っていたロープを切ることが出来た。自由になった手で服の埃を払い、足で牢屋の床を踏みしめた。大地の感触が、全身に跳ね返ってくる。気持ちのいい感触だった。
「ん~。やっぱり、手足が自由ってのはいいわよねー。開放感があるわー」
「おい」
「さて、これからどうしようかしら。まあ、私をこんなところに閉じ込めた親玉をぶちのめすことは確実よね。何たって、『勇者』リア様を牢屋に閉じ込めたんですもの」
「おい」
「どうやって、責任をとらせようかしら。金銀財宝を献上させる……はまずいわよね。どうせ盗品だろうし。まあ、ここは順当に全員を捕縛して、王国に連れて行こうかしら。〈影の一族〉じゃないけど、そこそこ名の通った盗賊団みたいだし、聖剣のこともこれでチャラになるかも?」
「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「何よ、うるさいわね!」
先ほどまで気分がよかったので聞かない振りをしていたが、さすがに何度も呼ばれるとうるさくなってきた。リアは声のしたほうを睨みつける。
そこには、牢屋の外で番をしていたはずの仮面の男が立っていた。
「……ハ、ハロー?」
「はろー。それで、なぜロープを解いているのかな?」
「い、いや~。ちょっと体を動かしたいと思いまして」
「なるほどな。運動は大事だな」
「そうですよね! あなたならわかってくれると思いました。そういうわけで、もう少し運動をするために、外を走ってきますね。それじゃあ!」
リアはその場から全力で逃げ出そうとした。だが、仮面の男に襟首をつかまれてリアの足は空転するばかりだ。いくら前に進もうとしても、その場から一歩も動くことが出来なかった。
「お願いします! 逃がしてください!」
「逃がすわけがないだろう! 大体、俺の目の前でよくロープを切ろうと思ったな! 普通、見張りの目を盗んでするものだろう、そういうことは!」
「……ああ、なるほど」
ポンッ、とリアの手が叩かれる。リアの思考は敵に教えられてようやくそこに到達したようだった。
「まあ、お前が馬鹿で助かったよ」
この仮面の男もトラマルと同じようなことを言った。もしかしたら、トラマルの口が悪いのではなく、本当に自分が馬鹿なのではないか、と少し思ったリアであった。
仮面の男は、再びリアの手足を縛った。今度は、切れないように鉄の鎖を使った。これでは、いくらガラクタを使ったとしても切断することは出来ないだろう。
「もう一度、チャンスをくれませんか?」
「やらん」
ガシャン、という鉄格子の扉が閉まる音がした。リアにとっては、絶望の音だった。
「うう……。私、何でこんなにも馬鹿なんだろう」
リアの疑問に答える人は、誰もいなかった。
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