第6話 荒川くん、甘く見ることなかれ

 二つにチームが別れた。


 奈奈さんはグラウンドの脇で、マネージャーさんと先輩の女子選手とのガールズトークに回るそうだ。


 今回は体験入部の一年生11人に二年生を3人加えてタッチゲームをするらしい。


 僕と川中島くんは同じチームになった。

 僕はヒョロガリだけど、川中島くんはかなり恵まれた体格してるから、多分それも考慮されて、相手チームに助っ人二年生2人、こちらのチームには助っ人二年生1人のメンバーになった。


 でも、本当のラグビーやる訳じゃないから、あまり関係ないとは言っていた。

 ぶつかる訳じゃないから、体格は関係ないし、ラグビーの楽しさとかを簡単に体験するのが目的なんだって。


「鬼ごっこみたいなもんだから」と言ってたけど、鬼ごっこなんて、よく考えたら小学校以来かな~


「ピ~」

 大橋先輩のホイッスルが鳴り、ゲームが始まった。


 まずはボールはこちらボールから。

 こっちは川中島君を起点に進める作戦だ。

 タッチされると、腕立て伏せをしなきゃいけなくなるから、この場合、川中島くんはタッチされる直前にボールを横にパスする。


 突然ボールが僕の目の前にきた!

 川中島君、最初からノールックパスは僕にはハードル高いよ…


 まんまとボールを前に落とす僕。


「ピッ」とホイッスルが鳴り、ゲームが止まる。


「ノックオン、はい、その場で腕立て伏せ5回!」


「みんなでカウントー!」審判の大橋先輩が号令を出す。


「いーち、にー、さーん、しー、ごー」

 みんなが声を合わせてカウントする中で、腕立て伏せする僕。

 最初の洗礼は僕だった。


「次はもっと取りやすいボール投げるから、ごめん!」

 川中島君が気にして声をかけてきた。


「いや、僕がどんくさいから取れないだけだから、気にしないで。次は取れるように頑張るよ…」


 でも、それからも僕はボールを落としまくってしまって、チームはトライも何本かされてしまった。


 今また、僕のミスから相手ボールになり、トライをされてしまった。

 僕がミスする度にボールが相手ボールになり、トライも取られる…

 申し訳なくてみんなの顔が見れなくなってきた。


 思えば昔からそうだった。

 小学校の頃、少年野球を親にやらされたことがあった。

 最初は皆は優しかったけど、何回もエラーする内に態度が変わってきて。

 その内に練習の時のキャッチボールの相手も嫌な顔されたり…

 ミスするのが怖くて、試合でも「ボールが飛んできませんように」と、祈るようになった。

 ボールが来ると挙動不審になった。

 周りにはバカにされるし、いい思い出がない。

 野球以外も同じような感じだった。

 球技になると皆の足を引っ張ってしまうから、練習の輪にもいれてもらえない事もあった。


 もしかしたら、ラグビーなら僕にも出来たりしないかな…とか淡い期待もあったのだけど、やっぱ駄目みたいだ…




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