帽子





 黒いハットを一時期被っていて、汗かきなのですぐにオブジェとなりました。


 「この帽子いいね」


 「もう被ってないっす。あげます」


 「じゃあ、今度取りに来るから」


 なぜ今ではないのだろうか。それはたぁくんの拘りだと、今なら分かります。


 たぁくんは俺より、物を大切にします。


 そして、物にはドラマが必要なんです。


 たぁくんは黒いハットにドラマを付けたそうとしていました。


 ドラマチックな人生。素敵だと思います。


 結局、たぁくんは黒いハットを持って帰りませんでしたね。


 時間が来てしまったので、仕方ないです。


 あなたの時間を奪ったから、俺の時間を差し上げます。


 一緒に生きましょう。末長く、いつまでも。





 


 

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