ここにする。

俺は状況を一通り説明した。


「実に簡単に領地って貰えるものなのね。所詮貴族は貴族ってことかしら。その地に住まう者の身になってみろと言いたいわ。


おっと、ぼっちゃまの前で言うべき内容ではなかったわね。」

と皮肉めいた事を呟く。


俺は聞かなかった事としてスルーすることにした。


「恥ずかしいのだが、辺境領土について今一つ分からない。そこから教えて欲しい。」

と俺は頼んだ。


「分かったわ。」とため息をついて

メルモニタ先生は話し始めた。


「まず知っておかねばならぬこととしては、

『この辺境伯領で一番偉いのは君のお父上だが、一番兵士を抱えているのはお父上ではない。』ってこと、領土についてもそうよ。」


(そうなのか……)


「実態として辺境領=辺境伯領ではなく、

人が住むエリアは、君の父上の依子(よりこ)となる伯爵、子爵、男爵、騎士などがそれぞれの領地を渡され収めているの。

形式上はヘイダール家からそれぞれの貴族に領地は下肢された形となってはいるものの、貴族はその領地において絶対的自治権を認められているのよ。


その代わり何かあった際の軍事力の供出や租税の一部供出が義務付けられているし

家同士の争い(水利権などに関する争い)の

裁判権は辺境伯が有する。

もっとも伯は裁判の時のみ出ていくだけで、それも形式だけと化しているわ。


簡単に言えば、名誉と金はあるが、力と領地はあまり持っていないのが君の家。」


「ちょっと待ってて」

そう言ってメルモニタ先生は奥にひっこんだ。


しばらくすると辺境伯領土全体の地図を持ってきた。


「辺境伯領の領都であるこのヘイダール(君の家の名前が付けられている)とその周辺の土地、そうだなここら辺までが君の家の直轄地ね。そしてざっくりここら辺までが諸侯の土地と考えれば良い。」


「空白の地帯が多いな。」

地図でヘイダール辺境伯領と書かれている場所は広大な面積を有する。

ただ、先生が指したエリアはその一部でしかない。


それ以外は……と。

地図を俯瞰して見る。


「領土の割に諸侯へ割り振られた土地が少ないと思っているのね?」


「ああ。」


「東には敵対しているグノーシス王国があり、それと接する一帯は緩衝エリアとなっているの。小さな開拓村程度はあるものの殆ど放置されているのが現状。

また同じような理由から同じサヘラ王国に所属している西のメイオマール公爵の依子の男爵領群や南にあるナルタニャ公爵の依子の男爵領群などと接するエリアでも開拓は進んでない感じかしら。

因みにもとこの家に属していた男爵家が、ナルタニャ公爵家へと依り主を鞍替えしたりしているけど、君の父上は公爵家に対し公にクレームを出していないようね。

領地は貴族にとって命の次に大切なもののはずなのに……。愚かと言うかなんと言うか……

あとは……開拓をするのにリスクが大きい山岳地帯や魔獣が多数生息する領域なので領地といっても未開拓なのは当たり前よね。」


地図を見回す。

(ならば貰う領地の候補はここかここ……だな。)


(ん?待てよ?)

この三角印は?


「ああ、そこは魔物の巣となっている。いわゆるダンジョンと言われるものがあるところ。」


(なるほど。)


「因みに山岳地帯に人は?」


「『ヒノカミ』と呼ばれる少数民族が住んでいる。君のお父上によって迫害され、不毛の地までおいやらた一族よ。」


(そうか……)


「ありがとうございます。お陰で頭の中が纏まりました。」


「そうか参考になったなら良かった。ちなみにどこかな?」


俺は自信を持って1点を指さした。


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