父上が何でもくれると言ったので領地をねだることにした。
放蕩三昧で領民を顧みない領主と魔獣の住む領地。
それに辺境伯と呼ばれていることから、都から遠く他国と接しているだろうと考えられるロケーションの悪さ。
このままではいずれ詰む。そう俺は考えた。
考えられるのは……
-民衆の反乱が起きてギロチン台行きルート
-魔物のスタンピードによる滅亡ルート
-国境を接する隣国により占領されるルート
-無能さを理由に国王から取り潰しをされるルート
(この4つのルートだな。
どれとってもろくなルートではない。
折角生まれ変わったのに、このままだとバッドエンドコース確定だ。)
そこで俺はフラグを潰すべく行動を起こすことにした。
◼️□◼️□◼️□◼️□
昼すぎに父上の執務室を訪れる。
「お坊ちゃま、お父上は今執務中です」
文官の『メッキ』がそう告げる。
揉み手大会があったら間違いなく
トップを張れそうな奴である。
(執務に 勤しんでいるとは見直したな
意外と市生の評判と違い、まともなのか?
仕事のあと相談した方が良いか……。)
そう考え引き返そうとした。
「あっ…………」
ふと執務室から女性の声がしたような気がする。
耳をこらすと
女性のむせびなくような声が執務室の方から聞こえた。
メッキの方を見るとあさって方向に目をそらす。
(絶対ろくなことをしていねぇ)
息を吸いドアの前で
「お父様。ご相談があって参りました。」
大きくかつ出来るだけ明るい声で話かけた。
執務室で何かごそごそしている音がする。
「メッキ、場所は分かるから、安心せよ。
お父様今伺います。」
そう大声で言って、30カウントしてから中に入った。
扉を開けると執務室の椅子に腰掛け
デスクで書き物をしている風の父上がいた。
「ごほん。今日はどうしたんだ?仕事中はあまりここには来るなと言っただろう?」
「お仕事を邪魔したら悪いのですぐに帰ります。
倒れてご心配おかけしたので、無事に治ったとのご報告にあがりました。」
とニコニコ笑いながら話した。
「そう、それは良かった。お前は大事な跡取りなのだから、身体には気を付けるんだぞ。」
と返してきた。
「それと、今日はお願いもあってきました。」
改まって言う。
「なんだ、またおねだりか。こないだ新しい剣を買ってやったろう。」
「今度は剣ではなくて……」
「なんだ、馬か?」
「いえ……」
「言ってご覧なさい。お前の為だったらなんでも都から取り寄せてやるぞ。」
(よし、言質は取った。)
と心の中でガッツポーズを取った。
それで俺は言った
「俺に 領地をください 」
父上はブッと吹き出した。
「なんでもと父上が言われたので」
そして父親は笑いだした。
「それはそうだが……ははは、
もうあと数十年待てば俺の持っている土地は全てお前のものだ。それまで我慢しなさい 」
まるで取り合ってくれない。
(まあ普通そうなるわな。もうひと押しするか。)
「私もまもなく成人になります。
そろそろお父様の手助けをなんらかさせて下さい。
その為には少なくとも領地経営の基礎ぐらいは知っておく必要もあるのでは?富んだ土地はいらないので、領地経営を経験させて欲しい」
(聞いた話この世界の元服は最低12歳かららしい。)
「殊勝な心がけだ 。流石わが跡取り。
お前を多少見損なっていたようだ。
しかしなあ……お前の母親が何と言うか……母 親 が OK ならば考えていいぞ 」
(いいんかい)
心の中でツッコミを入れる。
まあ簡単なほうがいいか。
「それと……」
と話をつなげる。
「まだ 願い事があるのか?」
「はい。もし母上の許可がとれたら……
父上の部下で扱いが難しい部下を私の補佐と言う形で付けて貰えませんか?
流石に私一人では自信無いので。
私を補佐するという名目があれば、
父上も、うるさ方の厄介払いができますよ 」
と俺は言った。
その一言は 父親に効いたようだ。
「そうか。」
露骨なくらい顔が明るくなるのが分かった。
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因みに母上は……
「まあ、本当立派になって。お父様の補佐を言い出したんですって?
いつまでも子供とばかり思っていたら……
末は東方を統べる英雄ってところかしら。
いいわ、母は許します。思う存分やってらっしゃい。
これでこの家も安泰だわ。」
こう言って激励してくれた。
本当なんと言うか……チョロい。チョロすぎる……
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