第51話 グレムリン
貴重な武官であるアルバートが戦力として加わった翌朝。今なら勢いがついているという謎理論の元、2匹目のドジョウ狙いでマコトは再び召喚の儀を行った。魔法陣が「白く」輝いた。
(あーあ、
現れたのは、大きな耳が特徴的のかなり小柄な人型の魔物だった。
「とりあえず自己紹介してくれないか?」
「オレはギズモ。種族はグレムリン。魔導器具に関しては任せておけ」
グレムリン……一説には旧エルフ文明が使い魔として創造したとされる生き物で、本能で魔導器具の整備、修理、設計、さらには改造までこなせるという生粋の技術者だ。
「お前の望みは何だ?」
「俺を技術者として雇ってくれないか? 結構前に雇用先の国が潰れて無職になっちまってツケがたまってきてるんだ」
「分かった。部屋は用意する。他に欲しいものがあったら遠慮なくいってくれ」
「いやぁ、助かりますぜ。俺はギズモ。俺の腕、アンタに預けることにするよ。今後ともよろしく!」
ギズモの胸から白い球状の光が飛び出し、マコトのスマホの中に入っていった。
数日後、ラタトスクの情報網に乗せたエンジニア募集の告知を聞きつけたグレムリン達、それとギズモを含めて総勢5名による技術者集団が出来ていた。工具も一通りそろえて準備が出来た彼らに、マコトは初仕事としてアレンシア国が使っていた洗脳装置を持ってくる。
「最初の仕事だ。コイツをバラして使えそうなパーツを取り出してくれないか? パーツはお前が責任を持って管理してくれ」
「はいよ。分かりました」
そう言って一斉に作業を始める。初仕事だというのに全員息の合ったチームワークで実に滑らかな動きでばらしていき、30分もしないうちにバラバラに分解してしまった。中々の技術力を持っているのがうかがえる。
「俺は魔導器具に関しては素人なんだが、お前らが見た感じ価値とかどうなんだ?」
「んー、大体のパーツはありふれていて今のエルフや人間でも作れる類の物ですぜ。神霊石が動力源ってのはちょっと珍しいですがね。まぁこれもマナを動力源にすることも簡単に出来ますがね。あとレアなパーツも混じってますね」
「ふーん。大して希少でも無いんだな」
パーツに関する説明を聞いているマコト。そこへシスティアーノがやってくる。
「おおマコトか。ラタトスク達から聞いたんじゃが技術者を雇ったそうじゃな」
「ああ。コイツらさ」
「わらわも参加してよいかの? 久々に技術者魂とやらがたぎるわい」
「あー、そう言えばシスティアーノさんは元技術者だったらしいとは聞いていましたけど」
「うむ。知っているのなら話は早い。4000年かけて編み出した理論を使えないか検討してみようぞ。吉報を待っておれ」
しばらくして……
「ふむ。それならばこの理論が使えそうじゃな」
「す、スゲエ。これがガチで使えるなら火力4割増しで副作用もねえぞ」
ギズモとシスティアーノが話し合いをしている。会話の詳細は分からないがいい具合だというのはマコトにもわかる。
「いやぁカシラァ、システィアーノの姉御にはビックリさせられ続けてますよ。俺なんかじゃ逆立ちしても出ねえアイディアがバンバン出てきますよ」
「そうか、そりゃよかった。最終的にはこいつを作るっていう大仕事が待っているから期待してるぜ」
そう言って10年後のマコトが持ってきた兵器の設計図を見せる。小さきエンジニアは一目見ただけで気づいた「奇妙な点」を問う。
「カシラ。コイツどこで手に入れました? この設計図の字、全部俺の字ですぜ。クセとかそのまんまですよ」
「なるほど、だったら10年後のお前が書いたんだな」
「??? 何言ってるんですか閣下?」
「言葉通りだ。10年後のお前が書いたんだ。まぁ気にするな。言っても分かんねえだろうからな」
「カシラ、大丈夫ですかい? 変な物でも食ったんですか?」
「なぁに気にするな。邪魔して悪かったな、続けて作業してくれ。そうそう、
意味深な言葉を残してマコトは去っていった。
【次回予告】
いつからなのかははっきりしない。
物心ついた時から、彼は魔物という生き物に彼は魅了されていた。
第52話「魔物図鑑」
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