第40話 クルス、養子になる
「んぐっ……んぐっ……ぷはぁ!」
メリルは自作の豆乳を飲んでいた。最近になって朝昼晩の3回、コップ一杯分のむようにしている。
マコトから聞いた話ではマメ類、主に大豆に含まれる成分には、胸を大きくする「女性ホルモン」に似た働きがあると言われている。
地球においては豆乳を日常的に飲んでいた女性の胸がAからDへとサイズアップしたという話や、豆乳を水のようにがぶ飲みしていた「男性」が巨乳になったという珍事まで報告されているという。
「いつか
メリルはふつふつと闘志を燃やしていた。
それからしばらくして、家事もひと段落して時間が出来たので気晴らしも兼ねて視察することにした。
開けた土地で訓練をしているミノタウロスたちの所へとやってきた。
「あれ!? メリル様! どうなされましたか? 視察ですかい?」
「うん。そんなとこ。様子を見させてもらっても良い?」
「もちろん構いませんよ。オイ、テメエラ! 王妃様が視察にやって来たぞ! 気合入れろ!」
ウラカンが大声を上げて部下たちに闘魂を注入する。メリルの視線は入隊してから数日が経ち、少しは軍隊生活に慣れた一人の少年に注がれていた。
「あなた。その、話したいことがあるの」
夕食を終え、2人きりの時間になってメリルが夫に話を切り出した。いつになく真剣なメリルの表情を見てマコトは重大な話だろうと思い、聞く。
「その、あなたが良いって言うのなら養子を迎え入れようかなって思ってる」
「養子だと?」
意外な言葉が出てきた。
「うん。ほら、こんな世の中じゃない。だから一応は家が絶えないようにしておかないといけないから。もちろん私たちの子供も産むけど、念のためにね。それに」
「それに?」
「それに、あの子は見ていて危なっかしい所があって、目に見えるところに置いておかないと何しでかすか分からない所があるの。あなた、お願い」
「うーむ。そこまで言うのなら会って話しても良いぞ。明日の昼ごろ時間を作るからその時に話し合おうか」
翌日
「クルス、閣下とメリル様がお呼びです。城まで来るようにとの事です」
「ええっ? あのオッサンと王妃様が?」
何をしでかしてしまったんだろう。俺は何も悪いことなんてやってないはず。不安に思いながらも彼は城へと向かう。
たどり着くと王の間でマコトとメリルが待っていた。
「メリル様、今参りました。その、いったいどのようなご用件でしょうか? 言っときますけど俺、悪い事なんてしてないですよ」
「うん大丈夫。叱るために来てほしかったわけじゃないから」
メリルがやさしく接する。それを見て彼は少しだけ身体の緊張がほぐれる。
「いきなりなんだけど、あなた私たちの子供になってみない?」
「はい!?」
あまりにも突拍子もない事を言われて大いに戸惑う。
「うん。そう思うのは分かる。いきなり誰かの子供になれ、なんて言ったって戸惑うとは思うわ。でも私はあなたの事を養子にしたいの。すぐには結論は出ないと思うけど考えておいて」
「俺もお前の事を養子にしようとは思ってる。まぁ今すぐってわけじゃあねえけど考えておいてくれ」
「メリル様が俺の母さんになるって事か? って事は俺、王子になっちまうのか?」
「そんなとこだな。一応王としての教育もあるからその辺はしっかりやってくれ。
まぁ当分の間玉座には俺がいるから勉強期間はしっかりとれるから大丈夫だとは思うがな」
「……」
クルスはしばらくの間黙った後
「わかったよ。あんたたちの子供になる。それでいいか?」
「そう。良かった。ありがとうね、クルス」
「よし、じゃあこれからよろしくな、クルス」
この日、養子とはいえこの国に後継者が生まれた瞬間だった。
翌朝
キッチンにいくと既にメリルが朝食を調理しており、マコトが椅子に座っていた。
「おはよう。クルス」
「おはよう。そ、その……母さん、でいいのかな?」
「おはよう。クルス。ま、その、これから仲よくしていこうぜ」
「分かったよ、オヤジ」
「メリルに対しては母さんなのに俺にはオヤジなんだな、まあいいけどさ」
「ウルセーな文句あんのかよオヤジ」
「ハハッ、お前くらいの子供はそれくらい跳ね返りが強い方がいいけどな」
親子3人、朝の顔合わせをした後朝食をとることにした。
マコトとメリル2人だけの時よりもちょっと賑やかな朝食を。
クルスの日記
後アケリア歴1238年 8月27日
とんでもないことになった。
養子とはいえ、俺は一国の王子となってしまった。ずいぶんとまぁ出世したものだ。
にしても父親は良いとして、義理とはいえ母親が俺と2~3歳ぐらいしか違わないって言うのは本当に奇妙な話だ。
王族とやらはその辺に対して違和感を抱かないのだろうか?
お偉いさんの考えてる事は分かんねえ。
【次回予告】
酒好きのドワーフたるもの酒場を建てて1人前! と言わんばかりに勝手に酒場を建ててしまった。
第41話「酒場が出来た」
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