第7話 地質調査
このままでは国が立ち行かなる。亡国の危機だ。マコトは危機感を抱いていた。
マコトの国は「何にもない」国である。分かりやすく言えば、特産品の無い国である。これが大問題だった。
今はギルドの依頼をこなして「外貨」を稼いでいるがそれだけでは限界が来る。何としても何かしらの特産品を作らなくてはと焦っていた。
とはいえ、ただ嘆くだけではなかった。次の一手をすでに打っていた。
そんなある日。薔薇の騎士団団員4名の護衛と共に数人の男女がマコトの国、ハシバ国にやって来た。彼らは皆知的な印象を漂わせていた。
「うわ! オーガ!?」
一団の一人がお虎を見て悲鳴に近い声をあげる。
「大丈夫です。彼女はこの国の民ですのでいきなり襲ってきたりはしませんから」
「は、はぁ」
ちょっとしたトラブルがあったが、そこへマコトが出迎え、丁重にもてなす。
「此度は貴重なお時間を割いてまで我が王国にお越しいただき誠にありがとうございます。どうかご助力をお願いいたします」
「大将、そいつらは?」
「地質学者さ。これから近くの山に何があるか調査してもらうんだ。もしかしたら有用な資源が見つかるかもしれないからな」
マコトはお虎に助力を仰いだ一団の紹介をする。
ハシバ国には城から西と東に小高い山がある。薔薇の騎士団を迎えるまでは毎日が食うや食わずの生活で、今日1日を生きるのに精いっぱい。そんなものをまともに見る余裕は金銭的にも精神的にも無かったのだ。
今回、その山に何かしらの資源があるのではないかと思い調査を依頼したのだ。
東の山を調査するために訪れた一行は持ってきたツルハシやシャベルで土を掘る。
「ふむ……これは粘土のようですね。もしかしたら陶器が作れるかもしれませんな」
「へぇ。焼き物が作れるんですか?」
「ええまぁ。詳しくは持ち帰って調べないと分かりませんがね」
そう言って持参したビンにサンプルとして粘土を詰めていく。特にトラブルはなく順調に調査を終え、帰路についた。
西の山を調査していた地質学者たちも小型のツルハシやシャベルでサンプルとなる土を掘っていた。
「これは何だ? 安山岩かな?」
「安山岩? 何に使うんですか?」
「建材に使えそうですね。大して珍しいものではありませんけど」
おしゃべりしながら楽しく作業をしていた、その時!
「しっ!」
薔薇の騎士団団員が気配を察知する。直後、草むらから矢がいくつも飛んでくる!
「ぐっ!」
「大丈夫ですか!?」
「ええ。かすり傷です」
茂みに隠れていた10匹以上のゴブリンの群れに加え、大柄の身体をした豚面の魔物、オークが2名が現れた。
彼らは出てきたが積極的に襲おうとはせず、なぜかじっとしている。
(……? 何を考えてるんだ?)
こちらは兵士3名と学者が3名。学者は戦闘では守らなくてはいけない足手まといだというのを考えると相手側の方が有利なはずだ。
何を考えているんだ……? 疑問に思ったその時だった。
「!? な、なんだ!?」
「か、身体が……!」
身体が痺れて全身が言う事を聞かなくなってくる!
矢に塗られた痺れ薬が効いて騎士団団員と女学者がそれぞれ1名ずつ、倒れてしまう。
敵はこれを待ってたのだ。薬が効いたのが分かるとゴブリンに指示をだし、犠牲者2名を拘束する。
「オンナ……連レ帰レ!」
「カサンドラ……エリス……! あんたたちは閣下に報告して……! 行きなさい!」
「「は、はい!」」
包囲される前に4人は脱出、カサンドラは逃げるふりをして後をつけ敵のねぐらの位置を確認、エリスは残った学者を連れマコトのもとへと急いだ。
「閣下! 緊急事態です! ゴブリンの群れに地質学者と兵士1名が捕えられました!」
「何だとぉ!? 緊急事態だ! 非番の奴全員と王国周辺で仕事をしている奴を呼び戻せ!」
開国以来の緊急事態に驚きつつも冷静に指示を出す。
「奴らのねぐらの位置は!?」
「特定しています! 兵を整え次第すぐ向かいましょう!」
「出稼ぎに出ている団員が来たらすぐ出る! 準備しとけ! 絶対に助け出すぞ!」
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