250.【防衛戦1日目】初日・戦後処理(と言う名の消耗品補充)
俺とユキは装備品の修理をしている柚月達に一言挨拶をしてから、クランホームへと戻ってきた。
クランホームに戻る前に柚月とドワンには装備品の修理をされてしまったが。
神楽舞で支援を続けていたユキはともかく、俺の方は使用した装備については大なり小なり耐久値が減っている。
俺としては柚月達は忙しそうだし明日に回してもよかったのだが、『明日に回したらめんどくさがって修理に来ないのが想像できるから今やってしまう』と言われてしまった。
……微妙に反論できないのが厳しい。
クランホームに戻ってからは、またひたすら消耗品作成を行うこととなる。
ユキの方は料理を、俺の方は各種ポーションをだ。
今日の戦闘でどの程度の備蓄を消費したのかはわからないが、多く作っておく分には問題ないだろう。
カラーポーションとか、作れるのは俺以外に数人しかいないし。
ユキの方も料理を始めたが、ユキの方には情報系クランから今日使用した料理の大雑把な消費数と作ってほしい料理の優先度リストが送られてきたらしい。
ユキはそれに従って優先度の高い料理から料理を始めている。
俺の方にはリストが来ないのかなと思っていたら、最初のロットが完成した頃にリストが届いた。
消費数については、どのポーションもかなりの量を消費したとしか言えない内容になっていた。
あえて消費数の少ないポーションをあげるとするならHP・MP回復のパープルポーションだろうか。
HP・ST回復のオレンジポーションはタンク陣の回復にかなりの量が消費されていた。
MP・ST回復のグリーンポーションの消費数は少ないかと思っていたが、実際にはそんな事はなくそれなりの量を消費したようだ。
超級スキルやスペリオルスキルにはSTだけでなくMPを消費する技も多いのだとか。
後は魔術士系プレイヤーがSTを消費して魔法の威力を上げるスキルを持っているらしく、そちらでもグリーンポーションは活躍したらしい。
クリアポーションについてはあまり消費してなかった。
明日の戦闘に備えて基本的に使用しなかったらしい。
つまり、何が言いたいかというと『パープルポーションとクリアポーション以外はそれなり以上に消費したから補充お願い』という発注が来ていたのだ。
……まあ、作る事に否やはないけどね。
とりあえず市場に並んでいる素材を買い集めてポーションを作り、在庫としてストックしたらまた市場の素材を買い漁るというループでポーションを延々と作り続ける。
市場に並んでいる素材がよく尽きないでいるなと思っていたのだが、どうやらポーションと料理のストックが少ない事は広く周知されている事らしく、装備品の修理が終わったプレイヤー達がこぞって採取に向かっているという話らしい。
今日の戦闘を経験したことで、明日も同等もしくはこれ以上の激戦になることは容易に想像できてしまい、そうなると必要になるのは消耗品のストックという事で余裕のできたプレイヤーが積極的に素材確保に動いてるんだとか。
なお、
今日の戦闘総括と明日の戦闘に向けての会議前に、こぼれ話としてフレチャで教えてくれた。
情報系クランも戦闘力があるプレイヤーは前線に出て戦っていたらしく、純粋な戦闘系クランを含めてかなりの情報が集まってきていると話していた。
問題があるとすれば、今日半壊してしまった西門の防衛をどうするかという話らしい。
鍛冶系スキルと錬金術系スキルによって門の修理も可能らしいのだが、破壊されたダメージの半分までしか回復出来ないらしく、67%も破壊されてしまった西門は最優先で復旧させているが理論限界まで回復させてもかなり厳しい状態らしかった。
それに、西門は魔導バリスタも3機破壊されているらしく、そちらの再設置も急務として進められているらしい。
そう言う訳で、西門の守りについては半壊に至った原因を調べつつ大幅に見直すことになるのだとか。
俺達の配置は変わらないだろうという話だが、今日遊撃のメインを担っていたプロゲーマークランのうち片方は西門担当にするだろうという事だ。
教授経由で明日の情報を断片的とは言え仕入れながら、俺はひたすらポーション作りを続ける。
この11日間でどれくらいのポーションを作ったかなんて言うことはもう覚えていない。
と言うか、途中からスキルレベルアップを開放してポーション作りにあたっているのだが、【上級調合術】のスキルレベルが10まで上がっていることで推して知るべしという事だ。
最初からスキルレベルアップを開放していたら、今より2くらいはスキルレベルが高かっただろう。
スキル経験値がもったいなかったかなとは思うが今更後悔しても仕方が無い訳で。
何はともあれ、数を作らなきゃいけない現実と向き合いながら山のようにポーションを作成していく。
ユキの方は料理毎に工程が異なったりするのだから単調にならずにすんでいる訳だが、あちらもかなりの数を作っていることを考えると、単調に同じ作業を繰り返している俺とどっちが作業的に辛いのかな、とか思ってしまう。
……うん、ポーション作りをやり過ぎて思考がおかしくなってきてるかもしれないな。
「トワくん、そろそろ2時間経ったよ。一度休憩にしない?」
「うん? ああ、もうそんなに経ったのか。わかった、休憩にしよう」
「それじゃあ、談話室にいこう。外の空気じゃないけど、工房の外で休みたいからね」
確かに、いつまでも工房に篭もっていると落ち着かないかもしれないな。
ユキと一緒に休憩を取ることになった俺は、二人一緒に談話室へと移動する。
談話室につくと柚月が一人で休憩していた。
装備品の修理の方はある程度でも終わったのかね?
「柚月、そっちも休憩か?」
「ああ、トワにユキ。休憩というか攻略会議が終わったからこっちに来たのよ」
「攻略会議か。教授からはなかなかハードになりそうだって聞いてたけど、どんな感じだった?」
「まあ、ハードだったわね。私達生産系クランについては最初の方の打ち合わせだけで抜けることになったんだけど、戦闘系クランの会議はまだまだ続いているはずよ」
「……それはまたハードだな。何でまたそこまで長引くことになってるんだ?」
「西門の被害が大きすぎることが問題視されてるみたいね。西門以外は、ダメージを20%程度に抑えている訳だけど、西門だけは67%でしょ? 何でそこまで被害が大きくなったかって言うのが揉めててね……」
「なんでそこで揉めるかね?」
「西門は2つのクランが同盟を組んで防衛にあたってた訳だけど、どうもその連携が崩された、と言うかグレーターデーモンが動き出して以降バラバラになってしまったというか、まあそんな感じらしいのよ」
「それってつまり、功を焦ったクランがいるって事か?」
「そんな感じらしいわね。それで、どっちのクランが悪いのかって言う話で紛糾してしまってね……」
「そんなの両成敗でいいと思うんだがな。結果的に被害は出てる訳なんだし、明日のための議論を進めないといけないんだから」
「その通りなんだけどね。やっぱり大手クランの面子って言うのがかかっている以上、引くに引けないみたいなのよねぇ……」
「……割と適当にやっている俺達にはわからない事だな」
「……その通りでもあるわね。ともかく、そんな訳だから生産系クランは解散、それぞれのクランで装備や街門の修理、消耗品の補充をやってほしいって事だったわ」
「なるほど、了解。それで、装備品はもう作らなくていいのか?」
「基本的にこれ以上の装備品は生産しない方向ね。今日の戦闘開始前の時点で装備が足りていなかったプレイヤーは全員竜帝装備をレンタルしてるはずだし、鍛冶士は装備の修理と街門の修理で手一杯。木工士は消費したバリケードやら櫓の再建作業に忙しい。錬金術士は破壊されたり使用して消耗している魔導バリスタの修理にあたってる。消耗品担当の調薬士と料理人は言わずもがな忙しい。割と余裕があるのは、裁縫士と細工士ね」
なるほど、確かに。
その2職以外は装備修理以外にも手を取られて装備の増産どころではないか。
「そんな訳だから、私としては割と手空きなのよね。裁縫系の修理依頼は私じゃなくても対応できる話だから、もうほとんど終わってるって言われたし。トワとユキの手伝いでもしようかしら?」
手伝いか、うーん、そうだな……
「ありがたいけど、あまり必要ないかな。素材の購入は作るものを考えて買わなきゃいけないから自分でやった方が早いし、購入自体はポーション作成の合間にでもできてしまうからな」
「私も同じ感じですね。気持ちは嬉しいのですが……」
「……まあ、わかってたわよ。私が同じ事を言われても基本的に断ることは承知してるしね」
まあ、そうなるよな。
同じ分野の生産職ならともかく、別分野となると手伝ってもらう事もないからな。
「……とりあえず、今出来上がってる分のポーションや料理を数えて作戦本部に状況を伝えておくわ。今から持ち込んでもあちらも立て込んでいるだろうし、消耗品の納品は明日にしましょう」
「そうだな。そのほうがいいだろう。柚月はそれが終わったらもう休んだらどうだ? 明日もある訳だし」
「……そうね、そうさせてもらおうかしら。もっとも、明日も街中で後方支援だから、あまりやることはないんだけどね」
「まあ、明日になったらやることが増えてるかもしれないだろ? 今まで忙しかった訳だし、今日くらいゆっくり休んだらどうだ?」
「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわね。現在の在庫量の確認が終わったらお先に落ちさせてもらうわ。トワとユキは後どれくらいログインしているの?」
「そうだな……。俺はあと2時間程度か」
「私もそれくらいですね」
「わかったわ。その予定も一緒に伝えておくわね」
「頼んだ。……それじゃあ、俺達もしばらく休憩させてもらうぞ」
「ええ。その間に私は在庫の確認と報告メールを作っておくわね」
少々ワーカーホリック気味の柚月を休ませることにして、俺とユキも休憩を取る事にする。
柚月は10分ほどでメールの送信まで終わらせてログアウトしていった。
俺とユキは15分ほど休憩した後、また消耗品の作成作業に入り、2時間ほどアイテム作成を続けてログアウトすることになった。
今日消耗した分を考えるとまだ補充が足りていないが、これ以上夜遅くまで起きているのも問題なので休むことにする。
フレンドリストを確認する限り、イリスも既にログアウト済みだし、『ライブラリ』で残っているのはドワンくらいか。
ドワンなら自分のペースを崩すことはないだろうし、特に連絡とかはしなくてもいいかな?
「……そろそろ時間だね。トワくん、今日の作業は終わりにしよう?」
「ああ、わかってる。今作ってる分が完成したら俺も終わりにするよ」
「わかったよ。それじゃあ、先に寝ることにするね。お休みなさい、トワくん」
「ああ、お休み、ユキ」
ユキを見送った後、5分ほどでポーション作成が終わったので完成品をクラン倉庫にしまい込んで俺もログアウトすることに。
……明日の戦闘も今日と同じくらいの難易度だといいのだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます