152.グリモアール作成
いつもの日課を終えて、新しく揃えた中級調合セットで店売り用ポーションを作成する。
……一度に作れる数は減ったけど、手を抜かなくても品質が上がりすぎないのはいい感じである。
こんなことになるなら【調合の極意】取らない方がよかったかな……
ともかく、店売り分の在庫も確保した俺はログアウトする事にした。
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明けて次の日、ゲームにログインするとメールが何通か届いていた。
1通は教授からで、何時頃にこちらに来ればいいかという話だったので時間を指定して返信しておく。
残りはハルやリク、それから白狼さんからのメールだな。
内容は……どれも特殊ポーションに関することだった。
書いてある内容は多少の差こそあれ、特殊ポーションを使うことでかなり効率アップ出来たという話だった。
白狼さんに至ってはクラン同盟を使って購入できるようにしてほしい、とまで書かれていた。
……はて、『白夜』のお抱え錬金術士では作れないのだろうか?
とりあえず白狼さんにはレシピの入手方法をメールしておこう。
さて、それじゃあ教授が来る前に今日の日課を済ませてしまおうか。
まずは銃製造クエストからだな、ガンナーギルドに行ってこよう。
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とりあえず日課の作業は無事完了。
あと少しで【魔力操作】は覚える事が出来る気がするな。
大分感触が変わってきた。
【気力操作】の方は……うん、頑張ろう。
さて、そろそろ教授との約束の時間だし談話室に移動するとするか。
談話室に移動すると、既に教授が待っていた。
まだ約束の時間までは10分ぐらいあるけど、相変わらず行動が早いな……
「おお、来たのであるな、トワくん」
「相変わらず早い行動だな、教授。それで、グリモアールのレシピってどうやって手に入れればいいんだ?」
「そうであるな……まずはこれを見てほしいのである」
そう言って手渡されたのは1冊の本。
これは一体?
「それはグリモアールの素材の1つ『魔書』である。【執筆】スキルがレベル50を越えると作れるようになるアイテムであるな」
「【執筆】スキルって……また、マイナーなスキルだな」
「マイナーなのは否定しないのであるが、何かと便利なスキルであるよ? 本の内容などを自動でコピー出来たりするのである」
「へぇ……で、これをどうしろと?」
「まあ、そう結論を焦るものではないのである。魔書を鑑定してもらいたいのである」
鑑定ねぇ……
まあ、そう言うんだから何かヒントがあるんだろう。
言われたとおり鑑定するとそこにはこう記されていた。
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魔書 ★12
魔力を込められた本
錬金術を使いモンスターの魔力を込めることで
グリモアールを作成することが出来る
(製作者:教授)
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……これはまた、ストレートなヒントだな。
モンスターの魔力、つまり魔石の魔力を込めろという事か。
「鑑定は終わったのであるな。それでは王都の錬金術ギルドに向かうのである」
「了解。そこでこれを見せればいいのかな?」
「そう言うことである。さあ、行くのであるよ」
さっきは焦るなといいつつ、今度は急かされてしまった。
ともかくこうしていても始まらないし王都の錬金術ギルドまで転移するか……
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教授とパーティを組み王都錬金術ギルドに到着したら受付のために2階へと向かう。
「おや、トワ君どこに向かうのであるか?」
「俺は2階で受付をすることになっているんでね。2階に向かうんだよ」
「そうであるか。『インデックス』の錬金術士はまだ1階である。錬金術スキルのレベル差の問題か、あるいはギルドランクの問題か……」
「さあ、どっちだろうな? ともかく俺は2階に向かうぞ」
「ああ、私も行くのである。待つのであるよ」
教授も伴ってギルド2階の受付へとやってきたわけだが……
ああ、サイネさんがいた。
「いらっしゃいませ、トワ様。本日はどのようなご用件でしょう?」
「実はこれを見てほしいんですが……」
「……これは『魔書』ですね。『グリモアール』のレシピがご要望でしょうか?」
「そう言うことになります。……ちなみにグリモアールのレシピってギルドランクいくつから入手可能なんですか?」
「基本的にはランク8からになります。もちろん紹介状などがあれば話はまた変わりますが」
「あと、前に見せてもらった販売レシピの一覧にグリモアールのレシピが載っていなかったのは?」
「魔書を手に入れるのが難しいからです。レシピとしてもランク8の錬金術士では難しい部類ですし、実際に魔書をお持ちでグリモアールをご要望の方にのみレシピを販売しております」
なるほど、確かに魔書を手に入れるのは面倒そうだ。
【執筆】スキルなんて上げてるプレイヤーはそんなにいないだろうし、
「それではレシピをお持ちいたします。10万Eになりますがよろしいですか?」
「ああ、構わない……はい、これが代金だ」
「確かに受け取りました。それではレシピをお持ちいたしますので少々お待ちくださいませ」
どうやら面倒なクエストとかはないらしい。
お金を払ったらそれで終わりのようだな。
「レシピの代金は後でまとめて払うのであるよ」
「了解。俺としてもグリモアールを作る機会なんてそんなにないだろうからな」
「希望とあれば魔書を『ライブラリ』に卸す事も可能であるが?」
「そういう話は柚月としてくれ。売り物にするかどうかはそっち次第だからな」
「わかったのである。後で柚月君と話をしてみるのである」
グリモアールが武器として優秀かどうかは何とも言えないからな。
俺は魔法武器を作る機会なんてマナカノンとマギマグナムだけだから、魔道士向けの装備がどれくらいの性能なのかはよくわかってない。
魔道士系列のジョブである柚月の方が価値はわかるだろう。
「お待たせいたしました。こちらがグリモアールのレシピとなります」
「ありがとう。それじゃあ今日はこれで」
「はい。またのご利用をお待ちしております」
特にこれといったイベントもなくレシピを手に入れてしまったので、まずはレシピを使用して覚えてしまうことに。
レシピの内容は……魔書が1つに魔石が3つか……
特に注意書きもないし種類は何でもいいんだろうな。
前に教授から見せてもらったグリモアールは3種類の属性を持っていたから、魔石の属性がそのままグリモアールの属性となるのだろう。
「さて、レシピも覚えたのであるな。それではクランに戻ってグリモアールを作成するのである!」
「いや、作成するのはいいけど……材料は?」
「心配ないのである。数十個分を『インデックス』から持ってきているのである。これで練習してもらいたいのであるよ」
「……わかったよ。付き合おうか」
「そうするのである。さあ、いざクランホームへ!」
これまた教授に急かされて俺はクランホームに戻ることに。
教授も目の前にやりたいことがあると止まらない性格だからな……
「あ、お帰りなさいトワくん。今日は教授さんと一緒?」
クランホームに戻ってきて教授と一緒に工房に戻ると、工房にはユキがいた。
「ただいま。これから教授に頼まれた物を作るところだよ」
「そうなんだ……私は出た方がいいかな?」
「一緒にいてもらっても構わないのであるよ。隠し立てする物でもないのである。出来れば柚月君も呼んできてもらえると助かるのであるが」
「柚月さん? わかった、工房にいるはずだから手が空いてるか聞いてくるね」
ユキは柚月を呼ぶために工房から出て行った。
さて、こっちは早速だけどグリモアールを作るとするか……
「さて、それではこれが材料である。足りなければまたクランから持ってくるので言うのであるよ」
そういって教授から渡されたのは50冊分の魔石と魔書のセット。
魔石の詳細を鑑定してみると、火・風・闇の3属性だな。
おそらくグリモアールを作ったときの組み合わせだろう。
まずは1つ試しに作って見るとしようか。
……レシピ通りに魔石と魔書をセットして後は錬金スキルを発動させて融合。
出来たのは★6のグリモアールだった。
最初にしてはまあまあの出来か。
「出来たようであるな……しかし最初から★6であるか。さすがと言うしかないのであるな」
「そっちの錬金術士はどうだったんだ?」
「最初は★3スタートであるな。試行錯誤してようやく出来たのが『ネクロノミコン』である」
「なるほどなぁ。個人的にはそんなに難しいレシピじゃなかったんだけど」
「特殊ポーションのような高難度レシピを普通に扱えるトワ君ならではであるな。それではこの調子でどんどん頼むのである」
「はいよ。とりあえずこのまま品質を上げていくとしますか」
その後は無心に製作を続けてひたすら品質の向上を目指すことに。
途中でユキと柚月がやってきて、柚月が教授と交渉を始めたが……あっちは任せるとしよう。
グリモアールを作り続けた結果、製作個数が30冊に達した頃には★9で安定するようになった。
……おそらくこの魔石をそのまま利用するんじゃ★9で打ち止めなんだろうな。
「試作は終わったのかしら?」
「うん? ああ、大体終わったな。これ以上の品を作ろうと思うと多分魔石の質を上げてやらないとダメだと思う」
「なるほどね……で、出来たのが★9でMATK180ね……」
「魔術士的にこの装備はどうなんだ?」
「うーん、一長一短ってところかしら? 使う属性が決まっていれば属性強化の恩恵を受けられるから便利だけど、そうじゃない場合は魔法攻撃力的に一歩劣る感じになるからね……」
★9でMATK180なら十分強いと思ったけどそうでもないのかな?
「そうなのか? 魔術士の装備は普段見ないからわからなかったな」
「あなたのお手製のマギマグナムなんかがいい例でしょ? 魔術師用の杖もあれと同じぐらいの魔法攻撃力よ。まあ、あなたのマギマグナムみたいに製造クリティカルを意図的に出せるわけじゃないんだけどね」
「製造クリティカルを意図的に? それはどういう方法であるか?」
「うーん、教授であっても余り教えたくはないかな……」
「ふむ、まあ、職人から無理強いして聞き出しても意味はあるまい。それで、★9以上のグリモアールは作れそうであるか?」
「魔石を変えるか、いじればいけると思うけど……それにしても何でこのタイミングでグリモアールを依頼しようと思ったんだ?」
「単純に私の聖霊武器の強化のためである。ネクロノミコンを作ったときの品質は7であったからな。トワ君に頼めばそれ以上の品質で作ってくれると思っていたのであるよ」
「……実際に★9までは作れてるからな。そういう意味なら魔石とかも厳選した方がいいんじゃないか?」
「ふむ……魔石の厳選であるか……具体的にはどうすればいいのであるか?」
「そうだな……とりあえずグリモアールに付けたい属性を教えてくれれば、その属性にあわせた魔石を俺が選ぶ事は出来るぞ?」
「付けたい属性であるか……付けたいのは火、風、それから死滅属性であるが……死滅属性の魔石に心当たりはあるのであるか?」
「うーん、調べてみないことにはなぁ。ちょっと一緒にきてくれ」
俺達は談話室に移動してマーケットボード前に立つ。
「とりあえず死滅属性の魔石が出品されてないか調べてみるよ」
「魔石の属性がわかるのであるか?」
「まあ、ちょっとしたスキルを手に入れたからね。それじゃあちょっと待ってて」
【魔石鑑定】を使いながら市場の魔石を調べてまわることしばらく、目的の魔石が見つかった。
「……デュラハンの魔石が死滅属性のようだな」
「デュラハンであるか……なかなかレア物の魔石であるな」
「そうなのか?」
「レッサーデュラハンであれば珍しくもないのであるが、デュラハンとなるとレアである。何せ、古代神殿のボスの1体でレベルが60前後のボスであるからな」
「なるほどね……それで、買うのか?」
「ふむ、闇属性でも幾ばくかの上昇は見込めるのであるが死滅属性の魔石の方が効果は高いであろうからな……それで、どれを買えばいいのであるか?」
「購入は俺からするよ、あとは火属性と風属性だが……手頃なのはフレイムワイバーンとウィンドワイバーンだろうなぁ」
「確かにそうであろうなあ。確認されているボスの中でそれらの属性を持っているであろう一番強いボスはそこ辺りである」
「……さて、合計金額が……74万Eになるが問題ないか?」
「ふむ。それで強化出来るのであれば安いものである。というか、本当にそれで足りるのであるか?」
「最良の組み合わせとなるとこれぐらいだな。それじゃあ購入っと」
「ふむ、代金はいつ払えばいいのであるかな?」
「完成品と引き換えで構わないぞ」
「わかったのである。それでは工房に戻るとするのである」
工房に戻った俺は早速グリモアールの作成に取りかかる。
今回は【魔石強化】も使って魔力値を強化しつつ、3つの魔力値が同じになるようにして、と……うん、魔石の準備は出来た。
後はグリモアールとして仕上げるだけだ。
そして完成したグリモアールがこれだ。
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グリモアール(火・風・死滅)+ ★11
魔書にモンスターの魔力を込めて作られた魔導書
火・風・死滅の魔力を宿し使用者の魔力を高める
魔石に最大限の魔力を込めて作られている
火属性攻撃ボーナス中
風属性攻撃ボーナス中
死滅属性攻撃ボーナス中
装備ボーナスINT+110
DEX+60
MATK+298 DEX+60 INT+110
耐久値:200/200
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「おお、本当に死滅属性のボーナスが付いているのであるな!」
「教授をだましたりしないって。それで今回の仕事の対価だが……」
「そうであるな。試作で作ったグリモアールは使うのであるか?」
「柚月、どうする?」
俺としてはどっちでもいい。
なので柚月に話を振ることにした。
販売するなら値段管理は柚月だし。
「……そうね、試作品の中で出来のいいのをいくつかもらえればそれで構わないわ」
「了解したのである。では★9になっている物を5つほど渡すのである。それで、対価の方であるが経費含めて4M程度でいかがであるかな?」
「俺としてはもらい過ぎな気もするけど……」
「ちなみに経費っていくらかかってるの?」
「合計で84万だな」
「それならそれくらいもらっても問題ないんじゃない? オーダーメイドの値段として考えたら妥当よ?」
「そうであるな。むしろ持ち込みが魔書だけである以上、少し安い気もするのであるが」
「まあ、そっちが4Mでいいって言うなら構わないさ。それで、柚月はグリモアールを販売するのか?」
「属性が作るときに固定されるからオーダーメイドでのみ受付でしょうね。ちなみにグリモアールに必要な素材って魔石以外はなんなの?」
「魔書というアイテムであるな。これについては私の方で★12のアイテムを卸す事が出来るのである」
「★12ってどうやって……いえ、生産アイテムじゃなければ可能か……ともかく販売体制が取れるのなら店頭には並べてみましょう。実際に並べるのはレイド攻略が終わってからだけど」
「それがいい。これ以上、面倒なオーダーメイドを受けたくはないからな」
「ふむ、それでは残りの魔石は回収するのであるが、残った魔書についてはそちらで使ってもらって構わないのである」
「わかった、それじゃあ魔石は返すよ」
「うむ、では代金である……確かに魔石は返してもらったのであるよ」
「それで、これからはどうするんだ?」
「うむ、クランに戻って聖霊武器を合成であるな」
「そうか。お疲れ様だ」
「うむ、いい買い物をさせてもらったのである。それではまたである」
教授は足早に去って行った。
「相変わらず
「そういう方なんでしょう」
「そういう人だな」
試供品として譲ってもらったグリモアールは柚月に渡しておくとして、素材の魔書の方はクラン共有倉庫だな。
教授のおかげで忙しい一日になったが、まあよしとしよう。
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