第4話

私が思わず立ち尽くしている間も、男は女を殴り続けていました。


やがて女が不意に男に向かって倒れこみました。


男は驚いたのか、後方に大きく跳びました。


しかしそこには電信柱があり、男はそれに後頭部を激しく打ち付けて、前のめりに倒れてしまいました。


――こっ、これは……。


大変なものを見てしまった、と思いました。


慌てて駆け寄りましたが、私が近づくとついさっきまでそこで倒れていたはずの二人が、すうっとその姿を消したのです。


――えっ?


どれだけ周りを見ても、やはり誰もいません。


わたしはもうわけがわからなくなりました。



一夜明け、私はもしかしたら昔あの道で何かあったのではないかと思いつきました。


そこで挨拶がてら近所の人にそれとなく聞いてみたのですが、みんな奥歯に物が挟まったかのような言い方になり、何も聞き出すことが出来ませんでした。


しかし四人目の、この人は何も考えずに生きているんだろうなと思える中年女性が、意気揚々と語ってくれました。


五年前の八月に、あそこでカップルが襲われて、女のほうが死んだと言うこと。


カップルはここの住人ではなかったこと。


犯人はまだ捕まっていないこと。


それ以上は知らないようで聞き出せませんでしたが、五年前の八月の殺人事件、そして住所はもちろんわかっています。


そこで私は家に戻って、ネットで調べてみました。

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