死の残像

ツヨシ

第1話

あれは結婚を二ヵ月後にひかえた私の身に起こった出来事です。


私はいきなり夫となる人物が買った家に住むことになりました。


築十年以上の中古住宅で、大半のお金は彼の親が出したものではありますけど。


その家に決めたのも、彼ではなく両親でした。


なんでも相場よりは安かったのだそうです。


彼は一応、何も言わずに勝手に家を決めたことを両親に抗議したそうなのですが、それならお金は出さないと言われて、あっさりと引き下がったようです。


本来ならもう結婚するのだから二人で住めばよいと思うのですが、私の両親も彼の両親も、もうすぐ結婚するからと言ってまだ籍を入れていない男女が同じ屋根の下で過ごすことは、近所に対して体裁が悪いと言うのです。


それで私一人で住むことになったのです。


でも一人で住むのであれば、あの家は一応彼の名義なのだから、彼が一人で住むべきだと私は言いました。


しかし私のいないところでいつの間にか親族会議が開かれ、私に何の相談も報告もなく、私にはその理由もわからないままに、私が一人で住むと言うことが決まったのです。


「家事をするのはあなたなんだから、結婚前に慣れておいたほうがいいじゃない」


私の両親も彼の両親も同じようなことを言いました。


私はそれについて、双方の両親の主張を覆す明確な名目も思いつかなかったので、そのまま従うことにしました。


余計な揉め事を避けたかったのです。



家は住宅地の一番西側にありました。


わりと大きくて思っていたよりは綺麗な家でしたが、一つ気になることがありました。


それは新居のすぐ西に道があるのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る