第53話 ストラウス魔術学園7


「クダネル、どこ? 

 どこに行ったの?」


 一人になったガベーラが焦った声を出すが、誰も答える者はいない。


「テスラっ! ミニクっ! みんなどこっ! 

 どこにいるの?」


 カベーラは、すでに半泣きだ。


「ヒック、みんな、ヒック、どこ、ヒック、どこなの?」


「わっ!」


 俺がいきなり声を上げ、背後からガベーラの背中に手を当てると、彼女はすとんと座りこんでしまった。どうやら気を失ったようだ。薄暗い森の中で仲間が次々いなくなっていくのが、よほど怖かったのだろう。

 座った形の彼女を横たえてやる。地面がやけに湿っているのは、彼女がお漏らししたからだろう。


 可哀そうだから、下着を脱がせ、それを木の枝にかけておく。その方が少しでも早く乾くからな。

 ガベーラの背後から活を入れ、彼女の意識を戻す。


「う、あ、わ、私、どうしたの?」


 彼女は、混乱しているようだ。

 座った形の彼女を後ろから支えている俺は、落ちついた声で答えてやる。


「お前とお前の取りまきが俺を狙ったけど、返り討ちにあったところだ」


「嘘をおっしゃい!」


「嘘だと思うか?」


 彼女の背中を小枝でつつく。

  

「ひいっ!」


 何を突きつけられているか分からないガベーラは、それだけで悲鳴を上げた。

 

「これはな、異国の不思議な魔道具だ。

 撃たれるとお漏らししちゃうぞ」


「ひ、ひいいっ!」


「お前、気づいてないのか? 

 さっき一度、撃たれたんだぞ」


「ひいいいっ!」


 木の枝に干してある彼女の下着を指さしてやった。


「いやーっ!」


「お漏らしを止めるには、下着を脱ぐしかない。

 さっきは、それで止めてやったんだ」


「いや……あ、ありがとう」


「これの効果だが、一年は続くから気をつけろ。

 それまで一度でも下着をつけると、漏れるのが止まらなくなるぞ」


「ひいっ!」


「あと、このことを誰かにしゃべると、一生お漏らしが治らないから気をつけろ」


「……」


 ガベーラは口を大きく開き、パクパクさせている。


「よし、俺の話は理解したようだな。

 お前、セリカの友達に暴力を振るったな。

 どうやってだ?」


「パ、パパに頼んだの」


「頼んだ?」


「パパが裏の仕事をさせている連中に頼んで、脅してもらったの」


 おいおい、専門家に頼んだのか。

 それを受ける方も受ける方だ。大人げないな。


「いいか、よく聞け。

 これからもセリカがのけ者にされるようなら、俺はいつでもお前をこれで撃つ。

 彼女の周りが以前のようになるよう、お前が気をつけろ」


「わ、分かりました」


 俺はこれからすべき事を考え、ため息をついた。  

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