第73話 妹の決意



 千葉らいか。

 都内の中学校に通う二年生の女の子。

 それが私だ。


「らいか、今日暇? 案内したいとこあるんだけど」

「え、なになに? お兄ちゃん、らいかに何か買ってくれるの?」

「何でそうなるんだよ」

「えー、違うんだー」


 そして、千葉ひょうか。

 それが私のお兄ちゃんの名前。

 女の子みたいでしょ?


 お兄ちゃんは私より一個上だから、中学三年生。

 今年は受験の年なんだけど、細心のオンラインゲームにはまってるらしくて、進路がちょっと心配だった。


 大事な時期なのに、ってお母さんは起こってたけど、お兄ちゃんは息抜きも必要だからっていつも反論してる。

 私としては、そんなやり取りがあったから、オンラインゲームに良い思いを抱いていなかったんだっけ……。


「うーん、でも久しぶりにお兄ちゃんが遊びに誘ってくれたんだし。行く行く! 分からないことがあったらちゃんと教えてね」

「調子良いんだから」


 お兄ちゃんが久しぶりに私を遊びに誘ってくれた。

 それが嬉しかったから、付き合う事にしたんだ。


 でも。

 まさか。


 あんな事になるなんて、思わなかった。


 私とお兄ちゃんはその時の事が原因で、ちょっと仲がぎくしゃくしちゃって、それでそのまま。


 私の記憶の中にあるお兄ちゃんの顔は、いつも困ったような、ぎこちないような顔ばっかりになっちゃった。


 だから、私はそんな顔ばかりで、お兄ちゃんの思い出をしめくくりたくなかったから、決めたんだ。


 あの時、お兄ちゃんが私の手を引いて未知の世界につれていってくれたように、今度は私がお兄ちゃんの手を引きに行くんだ。


 待っててね、お兄ちゃん。


 必ず助けに行くから。


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