龍の子どもたち
未由季
第1部
プロローグ
2017年、××県××村――。
近隣からの通報を受けて、駐在所勤務の警官二名は問題の集落に駆けつけた。
住民の姿は見当たらず、集落内は異様なほど静まり返っていた。
むせ返るような血の臭いが、警官二人の鼻を刺激した。
集落の住民たちの遺体は、神社付近に集中していた。
明日に迫った祭りの準備のため、神社には多くの住民が集まっていたのだった。
警官は、神社の裏手でひとりの男を発見、ただちに拘束する。
発見時、男は全身血まみれの状態で、奇妙な笑いを浮かべていた。男の周辺には、損壊した遺体が転がっていた。
警官の呼びかけに男は答えず、神経衰弱の状態にあると思われた。拘束された際に男が嘔吐したものの中からは、人体の一部と判断できるものが複数見つかった。集落にはこの男の他に、生存者が確認できなかった。
以上のことから、集落の住民は全員、この男の手によって殺害されたものと考えられる。男は殺害後、遺体の一部を食していた。
間違いなく世間を震撼させるであろうこの事件は、しかし明るみに出ることはなかった。
容疑者の男に対し、どのような措置が取られたのかは、現在まで一般に知られていない。
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