会社の上司を悪役にした異世界ファンタジーを書いていたら、読者が社長だった
エール
第0話 ~ プロローグ ~
※「プロローグ」部分は、主人公の土屋がラノベを書き始めた数ヶ月後の、同僚女性社員目線でのお話となります。
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一人暮らしの若い女性が、自室で最近お気に入りのネット小説を読んでいた。
時刻は、すでに二十三時を過ぎている。
明日も朝から仕事なのだが、どうしても更新されたばかりのその内容が気になってしまっていた。
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パワハーラ・ザイゼンは、フトシが吹っ飛んで行った方向を見やり、
「ふむ……私としたことが、殺さずに飛ばしてしまっただけだったか……まあいい、あんな雑魚はどうでもいい。勇者と、それに準ずる能力を持つお前達には、確実に死んでもらおう!」
パワハーラはまたもや、巨大な右腕を掲げた。
するとその上に、赤銅色に鈍く光る、先程よりも明らかに禍々しいエネルギーを凝縮し始めた。
「……これって、ものすごくヤバイよ! ユウちゃん、あの最終防御結界をっ!」
「はい、ミキさん!」
女性陣二人が、それぞれ『スタッフ・オブ・スイフト・ハイブリッド』と『スタッフ・オブ・アクア・ハイブリッド』を掲げ、集中して祈りを捧げる。
「……ふん、こざかしい……食らうがいい、
巨大な竜の右腕から放たれた、高速回転する赤銅色の禍々しい波動が迫る。
「「
すんでの所で女性陣二人の最強防御呪文詠唱が終わり、虹色に輝くバリアが出現した!
パワハーラの放った波動はそのバリアに食い止められてはいるが、消えることなく圧力をかけ続けていた。
「
俺は、杖を掲げ、必死に耐えている二人にそう確認した。
「……私達の労働組合、弱すぎる……それに対して、
ミキは苦しそうに、
見ると、
「やばい……このままだと、俺達全員、1分とかからずに全滅するぞ……シュン、何かいい案は浮かばないか?」
「……いえ……結界が張られている以上、こちらからも攻撃ができません。パワハーラの攻撃が止んでくれるのを待つしか……」
彼も、悔しげに首を横に振った。
そうしている間にも、どんどんバリアのひび割れが大きくなっていく。
「……もう持たないっ!」
ミキが、悲痛な叫び声を上げた、そのときだった。
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(……ツッチー、ノッてるね。最近この小説も人気も出てきたみたいだし……でも、パワハーラ・ザイゼンって、モデル、備前専務よね? まさか、あのパワハラ専務に楯突いたりしないと思うけど……ま、そんな度胸ないか)
クスリ、と彼女は笑った。
彼は、自分の会社をモデルにして、ファンタジー小説を書いている。
そして彼は、彼女が気づいたことに、気づいていない。
そのことに、若干の優越感を持っていた。
(明日もまた、ツッチーに会える――)
彼女は、自分が彼のことばかり考えてしまっていることに気づき、顔を赤らめた。
一人暮らしで誰も見ていないにもかかわらず、そのことに照れてしまい……隠れるように、ベッドに潜りこんだのだった。
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