第4話今の自分に向き合ってみる
「うーんっ」
部屋の窓からは、光が差し込む。
今日は天気が良さそうだ。
昨日はヨメナの話を聞く前に寝てしまった。
とても気になる話題だけに、少し悔いが残る。
くそ〜この体め。
なんでお前はすぐ寝てしまうんだ!
その答えは帰ってくるはずもなく。
ベッドから起き上がり、生まれ変わって前世とは変わってしまった自分の身体を鏡で確認しようとした。
今までは自分が女に生まれ変わって、しかも自分の娘として生まれ変わってしまったことを拒絶し、遠回しに避けてしまっていた。
だけど、ヨメナは俺の死と一人で立ち向かって乗り越えてきた。
今の俺の状況よりも、それは酷く辛く苦しく残酷だろう。
俺は知っている。
彼女がとても優しいことを。
俺は知っている。
彼女が優しいそれ故に一人で抱え込んでしまったことを。
俺は知っている。
彼女は孤独だったことを。
でもそれは違った。
彼女は孤独じゃない。
ただ単に俺の死があるが故に他人を拒んできただけだ。
そして彼女はある出来事で立ち直って、みんなでここまで乗り越えてきた。
俺だったら出来なかったかもしれないな。
そんなことを考えてみると、今の俺は誰も死んでないし幸せだと思う。
せっかく神様に貰った命だ。
大切にしなくちゃな。
そして俺は覚悟を決めた。
「よしっ、いけるっ」
そして俺は鏡に目を向けた。
「ふえっ?」
そこにはこの世界には類にも見ない美幼女がいた。
「これが俺か?」
試しに手を振ったりしてみる。
鏡に映る美幼女も当たり前だが、俺と同じ動作をする。
「…………やっぱり俺じゃん」
そう、やはり俺だった。
髪は金色の輝きを放っていて、みんなとの髪と比べると普通の髪質じゃないことは容易に理解できた。
そして耳。
普通とは違い、先はとんがっている。
いわゆるエルフというものだ。
俺もヨメナもエルフだから、エルフの特徴が出るのは当たり前のことだろう。
でもなんだかほかのエルフよりも耳が長い気がする。
というか絶対に長い。
これは今度調べてみるしかないだろう。
そして俺の目も、他の人たちとは違い特徴的だろう。
俺の目は、左右で色が違うらしい。
他の言葉で言い直すとオッドアイということだ。
左目が全体的に紫色がかっていて、眼の中心の水晶体は黒色になっている。
その一方で右眼は、全体的に黄色がかっていて、その中心の水晶体は白色になっている。
そして俺の目にはもう一つ特徴がある。
それは右目が見えないということだ。
これまでみんなにはバレないようにしていた。
大して変わらないと思ったからだ。
だがたまに、それを理由にミスをしてしまうことがある。
その時に俺をよく見ているヨメナが、片目が見えていないことに気づいたのだ。
その時はとても心配された。
まあ、自分の子供が片目が見えないとなれば心配するのは当たり前のことだろう。
俺も心配する。
だがこの原因は、三歳にならないと分からないとヨメナが言っていた。
その理由は明白だ。
三歳にならないと魔力が感じ取ることができないからだ。
この世界の人たちみんなそうだ。
だから三歳になった時にみんな神聖儀式というものを受けにいく。
この神聖儀式というのは神に自分の能力を教えてもらう儀式だ。
だから俺は三歳になるまで打つ手がないらしい。
まぁ俺もそろそろ三歳だし、魔力をそろそろ感じ取れるとようになると思っている。
そこまでは、気長に楽しみにしていよう。
ーーーーーーーー
時期は紅葉月の二十八日になった。
今日は俺にとって特別な日だ。
「シア〜出掛けるわよー」
そう、シトレアとなって初めて外に出られる日なのだ。
やっとのことで過保護のヨメナを説得できたのだ。
やったね!拍手!
初めての外出に関してはうれしいのだが、今日はそう気楽にはいけない。
今日はアキレアの誕生日であり、そしてアキレアの命日でもあるからだ。
まぁ言えば、自分の死んだ日と生まれた日ということだ。
まさか同じ日だったとは…
とても残酷な気分。
今日この日が来るまでがとても長かった。
分かるか?
昨日ずっと着せ替え人形にされてた俺の気持ちが!
「お出掛けするためにおめかししましょうね」とかヨメナに言われて、「ズボンと適当に上着着て行くから大丈夫」とか言ったら、ヨメナに「それはダメよ!」とか言って断られた。
何故かヨメナの後ろにいるオシエにもダメと言われた。
そんな風に捕まって、三時間ほど着せ替え人形をさせられた。
本当に辛かった。
男の俺にはとてもじゃないが辛かった。
結局は、最初に着せて貰った黒色のドレスに決まった。
それじゃあ昨日の俺は、ただ単に好き放題にヨメナとオシエに着せ替え人形にさせられただけじゃねーかよ!
無駄じゃん!
まぁ、過ぎたことはしょうがない。
振り返らないでおこう。
俺の傷が深くなっちゃうから。
みんなも出来れば忘れてほしい。
そう思いながらも、俺は目の前のドアを開けた。
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