彼女の叫び

彼女は何が欲しかったのだろう

何度も私に手紙を送り

何度も私にTELをした


日常の出来事を並べたて

きまって最後に

「ごめんなさい…うっとうしかったよね」


彼女は何が言いたかったのだろう

何度も花瓶を窓から落とし

何度も雨のシャワーを浴びていた


「花瓶もったいないよ」

「そうだね」

「風邪ひくよ」

「そうだよね」


悲しそうに遠くを見たり

訳もなく楽しそうに笑ったりした


まるで

遥か彼方の幸せを

かたわらから見つめているように


「私、自由になりたいの」

「思うように生きてみたいの」

「夢を追ってみたいの」

「今の私は私じゃないの」


遠くを見つめる彼女が

初めて心の声を聞かせてくれたのに

私は笑い飛ばしてしまった


彼女は彼女の人生を

彼女のものにしたいと

心の底から願っていたのに


私はそれを踏みつけた

彼女の気持ちも知らないで

私は彼女を独りぼっちにしてしまった


もしもう一度

彼女の声が聞けるなら

今度は笑い飛ばさない


何度でも

何度でも

あなたの言葉を抱き締めるから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る