7、代償


あの人の一番にはなれなかった。

つまり、あの人の太い首にこの腕をまわす事は叶わない。



一大決心の末、告白し、敢え無く玉砕。



自分が情けなくて、ヨロヨロとその場から立ち去った。



そして誰も居なくなった教室で。




机相手に泣いてみた。




急に影が濃くなった気がして、顔を上げればいつも隣に居てくれる友人が絞り出すように言った。



「俺で良ければ……胸でも何でも貸してやる……」



自分の擦り切れた腕はイヤに軽くて、

差し出されたその首に簡単に巻きついて、

そしてズシリと重くなった。

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