第31話

「さっきも言ったけど、その子、もうほとんど悪霊と言っていい存在になっているわ。だから説得なんて、聞き耳持ってないわね」


「……そうですか」


「で、何処?」


「なにがですか?」


「その子のいたところ」


「香川県です」


「香川県の何処?」


「綾上です」


「あやかみ?」


「いえ、綾川町です」


綾上町は数年前の平成の大合併で綾川町になっていた。


今は存在していない町名だ。


合併しても郡部はそのまま郡部なのだが。


しかし俺は何故だか、未だに綾上と言ってしまうのだ。


「綾川町。……ああ、知ってるわ。馬鹿でかいショッピングモールがあるところね。映画館もいくつもある」


「そうです」


「じゃあ案内してくれる」


「えっ?」


「行くのよ」


「何処へ?」

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