第27話

するとこの若い方の女が、天野真琴ということになる。


そして真琴はソファーの女をおねえちゃんと呼んだ。


するとこの女は天野真琴ではなくて、彼女の姉と言うことになる。


「あれほどいったでしょ」


「だから違うってば」


「もう許さないわ!」


真琴は姉の顔に拳を叩き込んだ。


格闘技でもやっているのかと思えるほど、腰の入ったパンチだった。


この拳は姉の顔面をクリーンヒットした。


「ぶぐっ」


姉が大きくのけぞった。


しかし真琴の攻撃は止まらない。


次々と何発も連続して拳を叩き込んだ。


姉は身を縮めて両手で顔をガードしたが、そのすき間を縫っておもしろいようにパンチが入ってゆく。


俺もとしやも、それをただ呆然と見ていた。


二十発は殴っただろうか。


真琴の攻撃がようやく止まった。


姉の顔はその面影が変わってしまうほどに腫れ上がり、鼻血を出し、口を切り、目の下も両目とも切っていた。


おまけにおんおん泣いていたので、その顔が血と涙でぐちょぐちょになっていた。


姉の変貌振りを見ていると、真琴が俺を見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る