第539話 強引さは専売特許
「まずは、お茶で喉を潤してほしい」
そう告げた
「
双子の挨拶を見守っていた
「やっぱり奶茶だ! すごい、初めて飲むよ!」
「奶茶……?」
興奮したように頬を上気させた宇の隣で、静はどんなものだろうかと首を傾げていた。
なにはともあれ、全員着席して改めてお茶会の仕切り直しとなった。
「美味しい、これが本場ものかぁ。
甘ったるいのじゃなくて、スッキリする!」
「乳の香りのお茶、ふぅん」
宇は感激しながら奶茶を味わい、静は初めての味に目を白黒させていた。
二人とも、そもそもこれまで乳というものを口にする機会はなかったらしい。
基本岩山ばかりの土地である苑州では、乳を出す家畜を飼うのが難しいのだろう。
一時期大公暮らしをしていた宇であっても、乳とは手に入らないものであったし、静も百花宮での潜伏生活で、乳が手に入るようなこともなかった。
そんな双子の隣では。
「……」
ジャヤンタがむっつりとした表情で黙り込んだまま、出された奶茶を飲んでいた。
リフィはジャヤンタの分もちゃんと用意したのだ。
そのジャヤンタの背後には
ちなみに
あちらはそもそも
このように、先程までに比べればおおむね和やかな雰囲気である。
「にしても、二人ともやたら早かったね?」
そもそも雨妹は呂に手紙を出してもらったが、双子が幡にまで押しかけてくると思っていなかった。
それに双子が手紙を読んでここへ来るまでには、時間が短すぎるだろう。
「佳から幡までの高速路を使わせてもらいました」
この答えに友仁も興味を持って耳を澄ませているからだろう、すまし顔で述べる宇に、静が続いて説明してくれた。
「あのねぇ、有事の時に使う道があって、
なるほど、幡と佳を繋ぐ道は大事な通商路なので、万が一の時に速やかに連絡ができるように、専用の道を作ってあるらしい。
二つの街が豊かで、道を別に通す財力があるからこそだ。
そして呂に託した手紙は利民にも読まれ、利民は幡がそこそこ大事になっていることを察してくれたのだろう。
そんな話をしてから、宇が同じ卓に座るジャヤンタの方へくるりと振り向いた。
「で? なるほど、こっちが話にあった死にかけた人?
確かに死人よりもちょっとマシって感じだね!」
宇が上品な微笑み顔でズバリと言うのに、背後に控える毛が「言葉を選んでください」と注意している。
「宇くん、これでも健康的な顔色になったんだよ?」
「なら前は、ほぼ死人だったんだね!」
雨妹がそう言い添えると、これへの宇の返答はやはり言葉を選べていなくて、「ですから」と毛が口をもごもごさせていた。
そんな宇の言葉を呂がきっちり通訳していて、ジャヤンタが顔を引きつらせている。
自分でもほぼ死人だった自覚があるかもしれないが、それを他人に指摘されるのは嫌なのだろう。
そして宇は次に「あ、そうそう!」と雨妹を見る。
「ちゃんと
「え、連れて来ちゃったの!?」
雨妹は驚くが、この場にその胡天がいないことをいぶかしむと。
「今は馬を飛ばし過ぎてお尻が痛いって言って、どこかで寝ている」
静が教えてくれて、いかにも身体を鍛えてなさそうな胡天を思い出し、雨妹は彼を哀れに思う。
それから奶茶をグビリと飲んだ宇は、またジャヤンタに視線を戻すと、口を開く。
「ねえ、どこに行く? どこに行きたい?
海か山かで選ぶのがいいかもね!」
さすが宇は、話を遠回しに進めることをしない子であった。
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