第11話「さぁ火事を起こそう」
不思議なこともあるもんだ。あれ蜘蛛の突然変異か何かかな。非常にキモいね。
そうか、月が真っ二つに分かれたんじゃなくてあの蜘蛛の目玉だったのか。うん、普通に考えて月が真っ二つになんてならないよね。ははは。
私が立っていたところには蜘蛛の前足とおぼしきものがあった。先端は刃物のように鋭く尖っている。もし動かなかったら首チョンパされていた。おーあっぶねぇあっぶねぇ。
「ミノリ、無事か!?」
私の元へ駆け寄ってきたアレンにこくりと頷く。
「ん。アレン、あれ何?」
巨大な蜘蛛を指差して問い掛ける。
「スキュラムっていう巨大生物だ。森の中に生息しているんだが、たまにこうして村に出てきちまうんだよ」
「ふーん。危ないの?」
「毒は持ってねぇが、かなり狂暴だ。火が弱点だが……なにせあのデカさだからな。今村の皆で火を集めて……っ!」
「おっと」
話してる途中でスキュなんとかっていう巨大蜘蛛が私達に糸を吐いた。
スレスレで避ける私達だが、どうやら一番距離が近かった私に狙いを定めたようで、前足を繰り出して攻撃しだした。
うーむ、久々の運動。身体鈍ってるなぁ。そりゃ2年もぐうたら生活続けてりゃそうなるか。
でも問題ない。少しずつ感覚が掴めてきた。
巨大蜘蛛の攻撃を避けながらアレンの方に目を向ける。今にも助けに来そうな顔で剣を片手にうずうずしているアレンの後ろにはこの村の住民とおぼしき人達がいた。
……今一瞬、耳が尖ってたりウサギっぽい耳だったり二足歩行で尻尾がふたつある猫がいた気がしたけどまあいいや。
「それ借りるよ」
誰にともなく声をかける。
ほら、そこの強面のハゲのおっちゃんが持ってる弓とふわふわ茶髪の爽やか青年が持ってる木の枝と近くにある焚き火だよ。
一度巨大蜘蛛から距離をとり、強面のおっちゃんから弓と矢数本をふんだくって爽やか青年の手から木の枝を奪い、それを手のひらサイズにへし折った。
なにか括りつけるものはないかとざっと目で探したがなかったため服の袖をビリリと破いて矢尻が隠れないギリギリのとこに括りつける。あ、これだと木の枝いらないじゃん。
まいっか。よく燃えるし。
細い矢を囲うように木の枝を括りつけ、そこに焚き火の火を移す。
破いた服の袖と木の枝の重量感と巨大蜘蛛との距離と風の流れをざっと計算し、弓を構える。
「おい、何する気だ!?」
誰かが何か叫んだが気にしない。
巨大蜘蛛がこちらに急接近した瞬間を狙い、矢を放った。
それは巨大蜘蛛よりも少し上にいき、背後で誰かが「どこ狙ってんだよ!」と悪態をついているのが聞こえた。
だが巨大蜘蛛まであと少しのところで枝と服の袖の重みで矢は下に傾き、それは見事に巨大蜘蛛の右目に命中した。
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