第16話

第16話 11人目のアルバイター


とある朝、霧子は剣道場を訪れていた。


「その…アルバイターとやらになればなんていうのかな…超常的な現象とかに理由がついたりする?原因が判明するとか…」


「…何かそういう事件にあったことが?」


「いやまあ…私が悪いのかもしれないんだけど…なんというか、私動物好きでいろんなペットを飼うんだけど…すぐに…死んじゃうんだよね…」


「すぐに…?」


「うん。もちろんちゃんとお世話したりしてたのに…うちに来た日は元気だった犬は1週間で病気にかかっちゃったし金魚とかハムスターは3日と経たずに死んじゃうの」


「それは…辛いですね」


「その理由って…なんでだろうかなってずっと思ってて。そういう超常的なことのせいにしちゃいけないけど、わかったら…少し気が晴れるというか…あの子達の仇を討ちたいというか…」


「…元凶が化物や魔物かは保証できません…ですがその可能性はありますし、そうであった場合出来る限りの協力はします」


「そう…じゃあ、やってみようかな。怖いけど」


「ありがとうございます。…医療系の設備も充実してますし、アルバイターになった場合、自身の体の強さは人間なんかでは比になりません。もちろんお互いに協力して怪我のないように、また出来るだけ平和に仕事を出来るように私も努めます」



こうして春近伊有が仲間になった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


一方その頃奈美は佐藤彩香の元を訪れていた。


「いーよー!」


「はやっ!っていいの?本当に」


「うん!うちはすっごい山奥の村育ちだから昔から山で遊んでたら、そういうのが見えるようになっちゃって。優しいのもいたけど、村に災いをもたらすのもいたから、そういうのを懲らしめてやりたい!」


「そ、そうなんだ。霧子にも聞いてみるね…じゃあ、彩香ちゃん。よろしくね!」


「うん!」


佐藤彩香が仲間になった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そうか、そっちの2人も仲間になったか」


放課後すっかり溜まり場となった本部で士郎と霧子が話している。


「ええ、不思議なものね。ありがたいけど11人みんなが要請に応えてくれるなんて…」


「まあ、今聞く限りわからなくもないがな」


「えっ?」


「イレズマ様は、もちろん異界適性度も見てたんだろうけど、選択において重要なのはそれが『正しい』かだろう?」


「えーっと…?」


「つまりは、イレズマ様が選んだ8人は少なくとも善性の人間で、神様の力を悪用する心配が少なくともなく、またこういうぶっ飛んだ話に耳を貸してくれて、アルバイターになってくれる背景があったってこと」


「あっ。なるほど…奈美はその優しさと正義感、陽太君は…女の子を放って置けないポリシー。健君は霊や化物への…復讐心、伊有さんは超常現象の原因究明、彩香さんは村の災いを止める力のため…えっと山藤くんと湯島くんは」


「山藤秀は遊ぶ金欲しさだ。まあ手伝ってくりゃなんだっていい。湯島一郎太は…根が優しすぎるな。色々と悩んでくれた挙句、『誰かを守れるならその力が欲しいし、僕が断れば次の人が必要になる』だそうだ」


「なんだか申し訳ない…本当に」


「いいんだよ、きっと。俺なんか興味だからなあ。まあ、だからあくまで推測だが、ここまでうまくいったのは」


「引き受けてくれるかどうかまで加味した上で人物をイレズマ様が指定していた…と」


「そういうこと。だからこそ若干怖いことはあるがな」


「怖い?」


「イレギュラーだよ。天海愛羅と政宗だ。

あいつらは…スカウトじゃあないだろう?まあもちろん選択肢として外されなかったわけだから、イレズマ様も問題はないと思っているのだろうが」


「そうだね…ただやっぱりあの2人は…すごく…」


「心強いよな」


士郎はそういう時トレーニングルームのモニターを覗き、互角に組手を行う2人を見てため息をついた。

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