第6話 〜始まり〜
「スキルの……見かた?」
「ああそうだ」
「お前達はいったい……」
「それより早く教えてくれ」
「あ、ああ。分かった」
秋也が少しキレ気味で言う。バームはその微かな感情を読み取り、素早く説明する。
「スキルを見るには、ステータスカードをもらわなくちゃいけない。ステータスカードにマナを注ぎ込むと、目の前に自分のステータスが映るって感じだ。この説明を、どこかで聞いたことはあるか?」
「ない」
「…………そうか」
「そのステータスカードはどこに行けばもらえる?」
春斗は半分わかりきった表情で問いただした。
「ギルドってとこだな。ギルドは知っているか」
「やっぱりかー!!」
「どっ、どうした……」
「あっ、いやぁ、続けてください」
春斗は少し凹み気味で呟いた。やはり春斗も男。『ギルド』という言葉に興奮してしまっても仕方がない!
「……それで、説明はいるか?」
「一応してください」
「うん。ギルドってのは、【冒険者】ってゆう職業の人たちが使う施設のことでな、冒険者の人たちはそこで依頼を受け、報酬をもらう。簡単にいうとこんなだが、ギルドに行ったら細かく説明してくれるさ」
「おっけー。それで、ここから一番近い街はどこだ?」
「ああ、それならこの道をまっすぐ行ったところに〈ショーラン〉って言う街がある。良かったたら一緒に来るか?」
「ああ、頼む」
秋也の狙いはこれだったのだ。街の位置などは知っていたが、いざ、入るとなるとものすごく怪しまれる。自分の身分を証明するものなどないし、服装もこの世界のと少し違う。だからこそ秋也は、他の人と行くことを選んだ。願わくば顔が広い商人を………
バームの後ろには人が人くらいが乗れるほどの馬車がある。材料はもちろん木でできていて、馬は二頭いる。恐らくこの世界での一般的な馬車といえばこれなのだろう。
「さあ、乗りな」
バームは4人を馬車の中に入らせてから、馬車を走らせた。馬が一回、地を蹴るごとに座面が揺れる。ものすごく痛い。とてもじゃないが、現役日本人には耐えられなかった。いや、今は現役ではない。元、日本人だ。
「ああ〜、もうっぅ!」
馬車を走らせてからわずか5秒で夏美が叫んだ。
「ちょっと!馬車を止めて!」
「おう」
馬車が止まったのと同時に、お尻の痛みがすっとなくなった。余韻は残っているが……
「ちょっと失礼!」
夏美は女だ。流石にお尻の痛みには耐えられなかったようだ。横で冬華もお尻を抑えながら顔を真っ赤にしている。
「な、何をするつもりだ!?」
「この馬車を改造するのよ!あ、安心して、ほんの15分程度で終わらせるからっ‼︎」
「かっ、改造!?」
それから夏美の“バームの馬車を神性能にしよう計画”がスタートしたのだ。
「ここが緩いのよ……もっと.…」
「こっちもここが………ここは……」
「これをこうすれば……」
「仕上げはこれで……」
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「出来たわ!」
「本当に15分で終わらせるとはな…」
「すっ、凄い..…」
変わったところをあげると、
・揺れが無くなった
・見た目が豪華になった
・座面が木から毛布に
・馬の機嫌が良くなった
・材料がアルミニウムに変わった
・バームの機嫌が良くなった
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「ふー、やっとケツの痛みがなくなったぜー」
「……夏美、の…おかげ」
「だな」
「ムフー、褒めて褒めてー」
「バームが言ってたけど、この性能だったら貴族の使う馬車の6,3倍はいいって言ってたな」
「やけに数字が細かいよねー」
「商人だからな」
そんな雑談を交わすこと10分合わせて25分ほどで初めて来る街、〈ショーラン〉に到着したのだ。高さ10メートルほどの壁傘の中に広がる街。門の前では、何台もの馬車が止まっている。ここに来る途中にも、色々な馬車にすれ違っているため、他人の馬車を見るのは初めてではない。
そして待つこと10分。待つのが嫌いな春斗がイライラしてきたときに不意に声がかかった。
「俺たちの番だぞ」
「身分を証明するものを出しなさい」
「これが、商人許可証だ。それと、こいつらを途中で拾ってな。こいつらがいた村は随分と文化が衰えているらしいから、身分を証明するものがないんだ。この街で作るそうだから、よろしく頼む」
「了解だ。そのかわり通行料として、銀貨1枚それぞれ貰おうか」
「いや、私が出そう」
「これでチャラだな」
「ふっ、上手いもんだな。まぁいい、これが銀貨4枚だ」
銀貨4枚=40,000円
「よし。通っていいぞ」
「悪いな、バーム」
「いいさいいさ。こっちは命を落としかけたんだ」
「だよなッ!」
「全く……で、ここからは流石に面倒を見らねぇぞ。ギルドに行くんだったら、この大通りをまっすぐ行って右側に大きな塔が見えたら左に曲がってやっための角を右に曲がった先にあるからな。くれぐれも迷子になるなよ!」
「サンキュー・」
こうして、4人の異世界活動がスタートしたのであった……
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「んで、バームの言ったことを覚えてる人」
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