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どうやら私は近いうちに、ハンナさんと会えるみたいです。
菟田野博士からの話で聞いていたハンナさんは、金色の髪を長く生やした、背の高い綺麗な女性です。お見かけしたことはありませんが、ハンナさんのことを話す菟田野博士はとても愛おしそうな顔をするので、きっと素敵な人なのだろうなと思っています。そんな人と会えるだなんて、胸が高鳴ります。
ハンナさんと合流する日に私たちはコンサートというものを聴くとのことです。街一番のホールで開かれるクラシックのコンサート。音楽、というものです。曲を聴く機会は幾度もありましたが、それそのものを目的として観覧するのは初めての経験です。ハンナさんに会えることと同じくらい、期待が高まります。
ところで、元々菟田野博士に経過報告を伝えるために続けてきたこの日記データですが、研究所に戻ってからは行き先も決めずただ私の中で滞留させるだけになっていました。菟田野博士はすぐ傍にいますし、日常記録は直接口で伝えられるから、研究所に来てからは一度も送っていません。日記をつける必要もなかったのですが、習慣はなかなか抜けませんでした。私の頭の中に、未送信の日記のデータは日々積み重なっていました。
ですが、今頃になって気づきました。送る相手は菟田野博士だけではないのです。私が蓄えたこのデータを伝えたいと思った相手に、好きなように伝えれば良かったのです。私には、そう思えるだけの心がようやくできてきたのだと思います。
私はこのデータを竜水さんに届けたいと思っています。そのときがくるまで、頭の中に蓄えておきます。
きっとまた、いつかあなたに会えますように。
願っております。
EK-00 Name ナユタ
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