第988話 雲霧仁左衛門との戦いその2

「真琴様、風邪ですか?義父様は凍結したと聞いて、滝を見に行ってしまわれましたよ」




「ゲホゲホッ、うん、風邪っぽい」




織田信長が滝に行くのを確認した後、俺は部屋に入り布団を被った。




下手な芝居の咳をしながら、寝込んでいる。




「・・・・・・下手な咳などしなくて良いですから」




茶々が煎じ薬を持って部屋に入り布団脇に座るが




「ありゃ?」




「わかりますとも、何年共に過ごしてきた仲だと思っているのですか?って、まぁ、桜子が気がついたのですが」




茶々とは結婚して一番長いが共に過ごしてきた時間だと、桜子が長いかな?毒殺防止や健康管理の為、ずっと料理方として付いてきてくれている。


お初やお江は時として城の守りを頼んだりしてきたから。




「茶々、城見学は盛大に続けて。警備を緩く緩くして」




「お初が目を光らしてますが?」




「えっと、それはやめさせて、守って貰う場所があるから、茶々、お初、お江、常琴、琴時五人でそれぞれ一つ分社殿に入って。そうだな、俺の回復祈願に見せかけて」




「え?あの社殿にですか?」




袋田大子城は五方向に鹿島神宮・筑波山神社・御岩神社・大洗磯前神社・笠間稲荷神社の分社を奉ってある。




小さな社殿だが、五人くらい入って祈祷が出来るほど。




「そう、あの社殿が大切だから。で本丸御殿は警護を緩くして」




「それでは敵の格好の的になるのでは?」




「この中心に来て貰わないと・・・・・・」




「なるほど、しかし、私はここに残ります。鹿島殿には天穂と菊理を入れます」




「茶々が任せられると判断するなら、それで」




茶々を戦いの場から遠ざけたいと思う俺の気持ちより、強い信念を持った目で見つめられてしまうと断ることは出来なかった。




「そばにいても良いけど、手は出さないで。これは人ならざる者のとの戦い、俺でないと出来ないことだから」




「わかっていますとも。ほら、これは風邪の薬ではなく葛湯ですから飲んで温まってください」




熱々の葛湯抹茶味。




「おぉぉぉぉ、美味い」




「・・・・・・やっと心の底から出た『美味い』が聞けたような気がします」




ニンマリと今まで見たなかで一番嬉しそうな顔をしていた。


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