第984話 天穂と菊理
◆◇茶々視点◆◇
「茶々大母上様、初母上様、江母上様、私たち二人に武術を教えていただけないでしょうか?」
天穂
あめほ
と菊理
くくり
は、私たち三人に話があると言って来たので茶室で聞いてあげた。
袋田大子城に造られた茶室は常識的な質素な作り、六畳の広さを持つ離れの茶室で、袋田の山々を借景する丸窓を持っていた。
床の間には、狩野永徳最後の作品、満月の下、平安装束に身を包んだ少女が海岸の浅瀬で兎と戯れるが絵が飾られていたが、その美少女は元々は真琴様の絵を元にされていたが、決して下品な物でなく温かみを感じる絵だった。
かぐや姫?月、兎。
その三つを愛する私に良いだろうと真琴様がくれた品だった。
真琴様曰く、『桜島先輩っの絵だ』と喜んでいた品だったがまあ良いだろう。
おそらく、未来の物語の登場人物なのだろう。
「・・・・・・二人は武術は?」
「はい、一通りは。紅常陸隊の学校に身分を隠して入っていましたから」
「わたしもです」
そう二人は言うと、お初が、
「遺恨を晴らすため?」
「はい、勿論です。一太刀あびせたく」
天穂が言うと、菊理も
「天穂の助太刀をいたします」
と胸を張っていた。
「・・・・・・二人とも、その心、乗っ取られちゃうよ」
「え?」
お江が真面目で静かでそして強い目で言っていた。
その目は幾多の戦いを見て来た者だけが出来る目だった。
「私もお江と同じくそう思います。恨み辛み、それは普通の人間に対してならなにも言うことはないのですが、真琴様が敵としているミライアの仇
かたき
は、人ならざる者。闇の心はつけいる隙を与えてしまいます。真琴様の言葉を使うなら闇落ち、そして取り憑かれる」
「だったら、私はただ指をくわえて見ていろと?」
「・・・・・・」
お初もそれにはただ黙るしかなく、悔しさを同感しているようだった。
「真琴様に聞いてみましょうか・・・・・・」
どの様にすれば良いのか聞くしかないだろうと思うと、お江が、
「二人は巫女になったら?」
「え?」
「マコはね~ここで迎え撃とうと考えているんだよ。ここは好都合だってね」
「それはどういうこと?」
お江はいつも真琴様の護衛に張り付いている。
時に甘えん坊に扮して、時にこっそりと静かに忍びとして。
「この城の五芒星ってのが良いらしくてね、松が開けてから毎日、五つの神社参拝しては、なにやら唱えているの。それはね~前に使った十束陣に似ている感じだったよ」
「・・・・・・あっ」
お初が静かになにかを思い出したようだった。
「真琴様に考えがあると?」
「うん、紅常陸隊からも何人か巫女修行をさしているし、神楽の舞を鹿島神宮から呼んだ巫女の長から習わせているから」
「・・・・・・なるほど、なんとなく見えてきました。それなら間違いなく仇討ちの力になるはず、真琴様の血を引く二人なら相応しいはず、真琴様に聞いてみましょう」
私はその晩、真琴様に事の次第を話すと、
「・・・・・・そうか、二人は仇討ちをね・・・・・・だけど、倒せる者ではないよ」
「神楽を使うのですね?」
「うん、神楽の力も使って俺の術を増幅させて根本から消すつもりだから」
「なら、二人をその巫女に加えてあげてください」
「まぁ、それなら危険も少ないかな、仇を討つ力とするのだから二人も納得出来るかな?」
「そこは私が言い含めますから」
真琴様は子供の扱いには慣れがない。
それは仕方がない。
武士として働いてきたのだから。
「茶々、二人を頼むよ」
「はい、心得ております」
天穂と菊理は私は真琴様の術のお役に立つ巫女として仇を討つ力となることを説明すると、二人は納得して神楽を真剣に習い始めていた。
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