第861話 イスタンブール奪還
「敵は混乱の最中、今が好機、攻め込め」
と、指示を出す。
町外の門には真田幸村隊に守りを固めて貰っているので後方の心配はない。
味方の艦隊もダーダネルス海峡を突破したため、艦砲射撃の射程圏内。
あとはこちらに寝返る者を取り込めば・・・・・・。
「我は、カスピ海アストラハニをまとめるシュピリッツァ将軍、黒坂常陸様の軍門に降りたい。お取り次ぎを」
と、大声で叫んでいる屈強そうな筋肉ムキムキの大男が斧と槍が合わさったような武器を手に戦っていた。
「イスタンブール奪還総大将柳生右近衛将監宗矩である。味方になるというのなら、敵の総大将まで案内願おう」
「おぉ、心得た。付いて参られよ」
敵の罠かもしれぬが、乱戦となっている今を収めるには敵の総大将の首が一番。
進む道を選んだ。
すると、シュピリッツァ将軍は自ら先頭に立ち、襲いかかる敵を次々と斬り倒していた。
向かうは宮殿の中の本来アメフトス陛下が座っているべきはずの玉座だった。
「まさかこの私がこのような負け方をするとはな・・・・・・」
と、玉座から立つ男は、白い肌で金髪碧眼の男、手にはサーベルと呼ばれる剣を持っていた。
「クリミア王国軍団長ウラルフ・シベリアーノである。一騎打ちをしたい」
「おお、この俺がなってやる」
と、シュピリッツァ将軍が言うが、
「大日本合藩帝国総理大臣黒坂常陸守真琴が家臣、イスタンブール奪還総大将柳生右近衛将監宗矩がお相手いたす」
と、御大将からいただいた太刀を構える。
「そのような剣で私が倒せるかな」
と、不適な笑いをした。
その時、太刀の伊弉諾と伊弉冉の彫刻は淡く光っていた。
なるほどな・・・・・・。
「いざ勝負」
と、鋭い突きで斬りかかってきたウラルフ・シベリアーノ、膝を着いてその突きを避け、右下から逆袈裟斬りで切り上げた。
「ふははははははは、そのような鉄の剣、きか・・・・・・ん・・・・・・なんだ・・・・・・まさか・・・・・・」
血を吹き出しながら床に倒れた。
「そんな馬鹿な・・・・・・俺は選ばれしもの・・・・・・お力をいただいたのに」
「やはりな、魔とやらの力を持っていたのか?残念だったな、この太刀は我が大将により百鬼、悪魔などの退治が出来るように作られた物、異国の言葉で言えばデーモンキラーとでも言うのかの」
「デーモンキラー・・・・・・おのれくろさか・・・・・・」
と、床を這いつくばるウラルフ・シベリアーノに背中から一刺しとどめを刺して、首を切り落とした。
「素早い、あのような漸撃、俺にも躱せない。しかもあきらかに重い漸撃」
と、シュピリッツァ将軍が驚いていた。
「裏切れば、容赦なくこの太刀はあなたを斬る」
と、言うと首をぶんぶんと横に振っていた。
切り落とした首を壁に立てかけてある槍に刺し宮殿の見晴らしの良い場所の外に出て、
「クリミア王国軍団長ウラルフ・シベリアーノ、討ち取ったり」
と、高々と掲げた。
勝敗は決した。
多くの兵士は逃げ出し始めるなか、隣に立つシュピリッツァ将軍は、
「シュピリッツァは黒坂常陸様の軍門に降る。我が軍は残れ」
と、隣で大声で叫んでいた。
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