第501話 帰国

 1604年正月


俺は久々に常陸国の袋田の滝の温泉に浸かっている。


ジブラルタル城から帰国ししばしの休みだ。


日本三大名瀑の一つ袋田の滝の全面凍結と言う自然が作り出す絶景を見るために訪れている。


『「四度の滝と言って、西行上人が『この滝は四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえない』と、言うが俺は八度の滝だと思っている季節の合間の滝も見るべきだ」』


と、茶々と以前に来たときに言った言葉を自分自身覚えており、凍結した袋田の滝を見せたく、茶々と来た。


他の側室達は茶々に気遣い遠慮した。


「あのときの言葉覚えていたのですね」


「あたりまえだろ、どうた?氷結の袋田の滝は?」


「はい、素晴らしいですね。まるで異国のステンドグラスで作ったように美しい」


「ははははは、たしかにガラスのようにも見えるな。俺の時代だと、好きな者はこの全面氷結した滝を登る者もいるのだぞ、確かアイスクライミングとか言うのだが」


「それは修行ですか?」


「いや、そうではなく、スポーツ・・・・・・趣味だな」


「変わり者もいるのですね」


「ははははは、確かに変わり者だな。寒がりの俺はまねしたくない」


「確かに、真琴様は温泉に入っている方がお似合いですわ」


「寒いのは今でも嫌いだ。ははは」


「それなのに、こんな氷結の凍える所に連れてきてくださいまして、ありがとうございます」


「なに、留守を任せてしまっている茶々の為なら天秤にかけるほどのことではないさ。俺の大好きな常陸の四季を見て欲しいだけさ」


「では、次は夏に来とうございます」


「よし、覚えておこう。夏は意外とこの地域は暑いとこなのだがな」


茨城県大子は夏は暑く、冬は寒いと言う茨城県内でも少し気候が違う地域。


海沿いは海流のおかげ、潮風のおかげで、冬暖かく、夏涼しい住みやすい地域なのだが、阿武隈山脈で隔てられた大子はそうではない。


「さて、宿に戻るとするか、体が冷えてきた」


「はい、お風邪をめしたら大変ですからね。今では世界にその名を知らぬ者がいないほどの将軍が風邪で寝込んだら笑い話になりませんから」


宿に戻り、袋田の温泉で一週間ゆっくりとした。


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