第273話 ナンですか?
石炭の火力に耐えられなかった試作耐熱煉瓦を利用して、茨城城内の開けた庭に竈(かまど)を作らせた。
開けた場所にしたのは念のため。
そこを薪で温めさせる。
「副将軍のお料理バンザイ」
と、ふざけて台所で言ってみると助手となる桜子と梅子が首を捻っていた。
「今日は何を作るのですか?」
桜子が言うので、
「ナンでしょう」
と、俺が言うと梅子が
「何ですか?」
「ナンです」
と、俺は答える。
「御主人様、何を作るか教えていただけないと」
「だから、ナンでしょ」
と、お約束をやってみる。
少し不機嫌な顔をする二人に小麦粉を練ってもらうのと、桃子にいつものカレーを作ってもらう。
「では、これを竈に貼り付けて」
小麦粉を練って手の平大に広げてもらった物を俺は竈の側面に貼り付けた。
数分でこんがりと焼き上がる。
「何ですか?これは?」
と、桜子が再び聞いてきたので
「だから、さっきから言ってるじゃん、「ナン」って食べ物なんだよ」
「御主人様、わかってましたね?私たちが聞き返すのを」
と、少しふくれっ面で梅子。
「ははは、怒るなって、俺も初めて聞いたときには何回も聞き返したんだから、頬膨らませてるとかわいい顔がお亀さんになっちゃうぞ」
そう、俺が子供の時に突如、日本に広まった食べ物『ナン』。
いつのまにやら定着してしまう食べ物なのだが、流行りだした当時、
『インド料理のお店でね、美味しい物見つけたの』
『何て言うの?』
『ナンて言うの』
『え?私は知らないから聞いてるのに』
そんな会話があっちこっちであったらしいことを笑い話として聞いていた。
皆に夕飯に出すと、
「マコ、これ美味しい、何て言うの?」
と、お江が言うとすでにそのやりとりをした、桜子達は笑いをこらえていた。
「ナンでしょう」
「え?」
・・・・・・。
うちの食卓は楽しい。
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