第246話 小糸と小滝

 武丸が生まれて4週間、茶々がほどほどにいつもどうりの生活に戻りつつある中、俺は筑波山麓の直営牧場から届いた牛乳を温めて持っていくと武丸はすやすやと寝ている。


もちろん、このホットミルクは茶々のであって武丸のではない。


子育てと言う物が初体験であるが、そのくらいの常識はある。


九月も終わりとなると肌寒くなるから茶々に体を温めてもらおうと思って作ったホットミルクだ。


あとからお初と桜子にも持っていくつもりだが、茶々に話がある。


「あっ、真琴様、今、武丸は寝た所ですよ」


「そうか、牛乳を茶々の為に温めてきた」


「ありがとうございます」


そう言って、茶々は湯気の立つ表面に膜の張ったホットミルクを口にして、唇上に白い膜をチョンとつけては微笑みながら拭いている。


「あのだな、話があるのだが」


「小糸と小滝の事ですか?」


鋭い、流石に茶々だ。


「気が付いていたのか?」


「えぇ、二人が自ら頭を下げて申し訳ないことです。と、謝りに来ましたから」


「二人が悪いわけではない」


「わかっていますとも、遅かれ早かれお手付きになることぐらい想像出来ましたから、真琴様の身の回りの世話を申し付けたのです」


「わざとか?」


「はい、わざとですよ。ふふふっ」


と、微笑んだと思ったら急に真面目な顔になる。


「真琴様、生徒たちには手出ししてはいけませんよ。生徒たちに手を出せば真琴様がしている行いが悪行となります。あのような素晴らしい理念で動き出した流れに水を差してしまいます。もし側室を増やしたいなら正直に申してください。私が見繕ってあげます。あの二人は伊達様からの贈り者だからこそ私は認めるのですよ」


「あっ、うん。そのだな、数は増えなくて良いのだけど・・・・・・」


「子供いっぱいできると良いですね。私は側室達の子供と武丸を分け隔てなくお育てすると約束しますよ」


「ああ、子供の数か、そうだな、いっぱい生まれてにぎやかになると良いな」


「私もまだまだ産みますよ」


「ははは、取り敢えずは体をもとの状態に戻してからな、夜伽は」


「わかっております。ふふふっ」


小糸と小滝、伊達政宗によりもてなしの為に買われてきた娘たち、二人の姉妹は茶々がはじめっから側室候補として見ていた。


その為、俺の身の回りの世話をする係にした。


生徒たちに手を出させないようにするためだったらしいが、俺は見境なく手を出すほど野獣ではないのだが・・・・・・。


まだ、妊娠していない側室・お江、梅子、桃子もいるわけだし、女性を性のはけ口として見ているわけではない。


茶々達をみんな純粋に好き、同等に好き。


選べないくらいに。


一生懸命世話してくれた小糸と小滝も好きになってしまった。


俺ってもしかして、浮気性なのだろうか?


戦国武将となってしまった俺に多数の側室がいるのは、茶々の価値観では当たり前のことのようだ。



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