第243話 イクメン否定
息子が生まれて一週間、少しずつ人間らしい顔立ちになると、少し成りと自分に似ているところも見えて少し嬉しい。
まだぼんやりとしか見えないだろう目で、じっと顔を見つめてくれるとほほえましい気持ちとなる。
そんな武丸を抱いていると、右手に伝わる感触と生暖かい物体が。
ブニュブニュブニュブニュ
「おっ、なんか出てきたぞ、オシメだ、オシメを交換しなければ」
と、言うとお市様に武丸を奪われた。
「常陸様、殿方がと言うよりもあなた様はお忙しい身、いつまでも武丸の相手をしていたい気持ちは、わからなくはありませんが、常陸様は政(まつりごと)の要、仕事にお戻りください」
「しかし、俺の育ってきた価値観だと男も育児に積極的にかかわるべきだと育ってきました」
「誰がそのような事を言ったのですか?確かに父親と言う存在は大切です。しかしながら、奥向きの事、家の事が正室や側室に任せられないような家では、男は仕事に専念できなくなります。そのような家で男は休まりますか?適材適所、あなた様は政をし、奥向きの事は正室・側室に任せなさい。それとも正室や側室が信じられませんか?」
そんなことはない、大いに信じている。
だからこそ、うちの正室・側室には役職も与えていて色々任せている。
むしろ、俺よりも働いているくらいなのだ。
「わかりました。俺はこの時代の民ではないのは知っての通りなので、郷に入っては郷に従えという言葉もありますのでお任せいたします」
「わかれば良いのです」
お市様は、ウトウトしている茶々の代わりに武丸のオシメを交換している。
お市様は俺がタイムスリップをしてきたのを知っている数少ない人物の一人だ。
だからこそ、俺の価値観を否定したりもする。
「あっ、そう言えばこの時代って乳母とか雇うんですよね?」
と言うと、ウトウトしながら聞いていた茶々が布団から体を起こした。
「そのことですが、真琴様、武丸は自分の手で、乳で育てとうございます」
「いや、茶々がそう言うなら全然かまわないんだよ、乳母って言う風習がいまいち俺にはわからないから任せるけど、体とか大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。梅子達がおります。真琴様のお子を粗悪に扱うわけがあるわけないではないですか」
そう、俺には正室の茶々、側室のお初・お江・桜子・梅子・桃子がいる。
茶々達浅井三姉妹と、桜子三姉妹なのだが派閥に分かれることなくうまく接していてくれている。
それは一番歳下のお江が、桜子達を友達、はたまた実の姉のように接していてくれているのが大きく、出身の家柄での争いや蔑みなどがないのだ。
甘えん坊のお江は実は計算高い。
お初もさばさばした性格の為か、陰湿的なことを嫌うようで裏表はないくざっくばらんに桜子達と接している。
だからこそ、一夫多妻の俺でも黒坂家は上手く成り立っている。
「お初も、桜子も産み月が近いみたいだが大丈夫か?」
「常陸様、だからこそ松殿を連れて私が手伝いに来たのではないですか?落ち着くまでは私はここに逗留しますよ」
と、お市様。
それを言うと、松様も休息を済ませたのか廊下の襖を開けて入ってくる。
「松様もしばらく逗留してくださるので?」
「はい、利家から孫のように世話してこいと言付かっておりますゆえ」
「はははっ、孫ですか?」
「笑い事ではありませんよ。姫が誕生すれば三法師様の嫁になるお約束を上様としているはずでは」
「あぁ、そんな話もありましたね」
「ですから、三法師様の守役になっている前田家としては黒坂家のお子は主家になる大切な子なのです」
「なるほど、ですがうまく姫が生まれるかどうか」
「生まれるまで作ってください」
「はい?」
「ですから、生まれるまでひたすら子作りに励むのです」
「それはちょっと・・・・・・」
茶々とお市様は笑っていた。
それに反応してか、武丸も
「ふぎゃー」
と、反応している。
聡明な子だ。
男女の産み分けって都市伝説的にあったような・・・・・・。
浅いところで出すか?深い所で出すか?
横から出すか?下から出すか?
女性がイッテから出せば男になるとかならないとか・・・・・・?
野菜をいっぱい食べろ、肉を食べろとかいろいろあったけど、実戦しないとならないのかな?
そんなこと深く考えながらする夜の営みは楽しくなさそうと、考えながら俺は執務に戻った。
六人も・・・・・・八人も側室が居れば誰かしらは姫を生むだろう。
実は、お風呂の一件で小糸と小滝もお手付きになってしまった。
これは後で茶々に言わねば。
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