第67話 大津城築城視察・報告
次の日、宗矩が清書した大津城視察指示書に、署名をしたうえで力丸に織田信長のもとに届けてもらった。
そう言えば俺、花押とかってまだ決めていない。
城主になるなら必要性も出てくるか?
ハンコでも作るか?『天下布武』みたいなの。
と、考えながら軽い昼飯を食べたあと、何が良いかと考えていると力丸が部屋に来た。
「失礼いたします。上様がお呼びです」
織田信長って暇なのか?報告書、出したその日に呼び出すって時間余っているのか?と、思いつつも急いで着替えて天主に登城すると、茶々が案内すると言って待っていた。
いつものように天主最上階に案内されると織田信長は、俺の大津城視察指示報告書をまじまじと見ていた。
「来たか、常陸、やはり未来の知識があるものは違うな、特にこのパネル工法と、避雷針が良い」
「パネル工法は、俺のいた時代では比較的一般的な工法になっていて大規模な工場、あ、いや、工房と言うのでしょうか、そういう場所でまとめて作られて輸送されて、建てたい場所、土地で組み上げるようになるんですよ。避雷針は高い建物には必ず着けるように義務付けらけています」
と、補足の説明をすると、
「なるほどな、技術は進歩していくのか、未来の世界、実際に見てみたいものじゃ」
と、言った。
信長、平成に降臨?
「今、嵐山、吉田山の築城に京の都の十二門の再建、大津城の築城、さらに賤ケ岳城に牧野城築城をしようとしていたところ、これならパネルを作らせ琵琶湖を利用して運ばせれば工期も縮まる、良いぞ良いぞ、常陸、はははははっ」
と、すごくご機嫌だった。
「しかしだな、この避雷針と言うのが、いまいちよくわからないのだが」
って、俺もそれ説明するの厳しいんだよね。
「雷は電気の塊と言うのでしょうか、って、電気の説明からってどうしていいのやら」
と、言葉に出した。
「知っている言葉で好きなように言ってみろ」
と、織田信長は言った。
俺が未来人であることを理解しているからこそだよね。
「電気、ん~そうだ、冬場、人や、そうだな~甲冑とか触ってビリッと感じたことないですか?」
「あるぞ」
「あれがわかりやすく言えば強くなったのが雷なんです。俺の時代では電気と呼んで色々な絡繰り物を動かす力としても利用するんですが、それが空で自然にできるのが雷なんです。そのエネルギー、んと、力?勢い?は強いのですが、高い所に落ちる性質があります。その力は金属に流れやすいんですが地中に逃がすことで火災を防ぐんです」
いまいち説明が出来ていない気がする。
「神の力ではないのか?」
「俺自身、神は否定はしませんが、雷や地震など神の怒りや力と恐れられるものは、どういう仕組みで自然界で起きるかは俺の時代には説明、解析されていて神の力ではないというのは証明されています」
「そうか、わしもそれを理解したいが、流石にな。しかし、未来でそういうのがわかっていて、避雷針なるものが活用されているのを知った今、使わぬ手はないであろう、この安土の城にもすぐに着けるぞ」
「注意点は鯱より高いことと、金属でできていて地中にしっかりとつながっていることです。でないと意味がないので」
「金でも良いのか?」
金の槍?矛?かっこいいけど、電気伝導率は銀、銅、金の順番だったはず。
「その、電気と言う物が流れていきやすいのが、銀、銅、金の順番でして」
「なら、銀を使えば良いではないか?」
確かに正論。
「銅のほうが安くないですか?」
「わしを誰だと思っておる、織田信長ぞ、銀ぐらい集められるわ、それに石見の銀が大量ぞ」
なるほど、確かにそうだ、この国の実質的王の織田信長、そのくらいのことはできるか。
「常陸、この報告書とやらには、わしの寝所と書いてあるが計算したのか?」
「はい?なにをですか?」
金の計算?そんなものはしていないってもしかして予算オーバー?銀いっぱいなのに?
「この報告書を読めば、大津城はわしが常陸に貸し与えているように書いてあるではないか、だったらわしが全額金を出さざる負えなくなる、小癪な真似をしおって」
「えっと、全部蔵の金と陽変天目茶碗を売るつもりでしたが」
俺が指示して作らせるところは自分の金をだすつもりでいたのだが。
「ふ、常陸の蔵の金など使わせぬぞ、全額出してやる、さてと築城の工期が短くなるとなれば他も取り掛かるぞ」
と、言って退室していった。
お!なんか、計算なんて全くしていないのに良いほうに転んだかな?
得した?
一か月もすると、安土の天主の屋根には銀色に輝く槍が、鯱の両隣に高々と掲げられ、銀製の長い長い鎖が最上階から地中までつながっていた。
「受雷神槍」と名付けるらしい。
確かに針ではないからね。
少しかっこいいね。
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